- 1.どうして冬にインフルエンザが流行するのですか?
- 2.インフルエンザはどうして怖いのですか?
- 3.インフルエンザにかかりやすい環境はありますか?
- 4.家族がインフルエンザにかかったとき、感染しないための工夫はありますか?
- 5.インフルエンザの予防接種は子どもは2回で、大人は1回でいい理由?
- 6.インフルエンザの予防接種はどのような人が必要ですか?
- 7.インフルエンザの予防接種はどうして毎年必要ですか?
- 8.ふつうのかぜとインフルエンザはどうちがうのですか?
- 9.インフルエンザの予防接種のあとはもんだ方がよいのですか?
- 10.予防接種を受けた後、入浴や運動はどのようにすればよいですか?
- 11.インフルエンザの予防接種と併用する肺炎の予防接種があると聞きましたが?
- 12.新種のインフルエンザが流行するかもしれないと言われていますが本当ですか?
- 13.インフルエンザでは何日くらい学校や仕事を休む必要がありますか?
- 14.インフルエンザでせきが多くなるのはどうしてですか?
- 15.インフルエンザの潜伏期間はどれくらいですか、またどのくらい感染力が持続しますか?
- 16.インフルエンザには特効薬があると聞きましたが?
- 17.インフルエンザの特効薬はすべての患者に必要ですか?
- 18.インフルエンザの特効薬は予防的に飲むことはできますか?
- 19.インフルエンザの診断のための検査はどのようなときに必要ですか?
- 20.インフルエンザのときの解熱剤の使用上の注意は?
- 21.A型とB型インフルエンザについて教えてください。
- 22.インフルエンザの予防接種はいつころまでにすませばよいですか?
- 23.インフルエンザワクチンの接種は何回必要ですか?
- 24.妊娠中でもインフルエンザの予防接種は受けられますか?
- 25.インフルエンザ予防接種の副反応はどのようなものがありますか?
- 26.インフルエンザ脳症とライ症候群について教えてください。
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Q1:どうして冬にインフルエンザが流行するのですか?
A1:冬になるとインフルエンザが毎年のように流行してきます。
冬だけではなく寒暖の変化の大きい季節の変わり目などもかぜが多くなってきます。長年、診察室で過ごしているとカゼの流行期の特徴がよく分かってきます。カゼは空気が乾燥する冬や気温の変化が大きい季節に流行しやすい特徴があります。
最近では夏に室内で冷房が寒いくらいきいているため、外気と室内の温度差が極端に大きくなって起こる夏かぜも多いようです。
それではどうして空気の乾燥や気温の変化が鼻やのどに影響を与えるのでしょうか?
鼻やのどの表面の粘膜には線毛という細かい毛がたくさんはえています。この線毛は粘液という水分で潤いながら活発に動いています。かぜのウィルスや細かいごみ、花粉などが進入してくると、線毛と粘液の働きでこれら異物を外に運び出してくれます。
空気が乾燥してくると鼻やのどの表面が乾いてくるために、線毛の動きが悪くなりウィルスが侵入してきても排除しにくくなります。冬に寒くなると空気が乾燥して、かぜが多くなる一つの理由です。
線毛の働きは気温が下がっても悪くなります。のどを冷やすと線毛の動きが悪くなるだけでなく、粘膜の血管が縮んで血流が悪くなります。血流が悪くなると線毛の動きが悪くなるだけでなく、かぜに対する抵抗力が発揮しにくくなることが予想されます。たばこも血流も悪くすることが考えられます。
このような理由により冬や季節の変わり目にかぜが多くなってきますが、冬の極端な暖房は空気の乾燥と外との気温差を強くしてしまいます。また、夏の冷房も注意が必要です。
かぜの予防は簡単ではありませんが、少なくとも夏冬の極端な冷・暖房は控え、冬には室内が乾燥しすぎないように注意しましょう。また、冬には外出直後に冷たい空気がのどを刺激するために、あらかじめマスクやマフラーを着用しておくのも効果があります。ウィルスはのどに付着するとすみやかに粘膜を通過するため、帰宅時にうがいをするのがどの程度かぜの予防に役立っているか、はなはだ疑問です。
しかしふだんからうがいをしておくのはのどの乾布摩擦と考えられ、のどを強くしてかぜの予防に役立っていると考えられます。
一度かぜをひくと体の抵抗力(白血球の働き)が回復するのに時間がかかります。これははじめのかぜの際に、抵抗力をある程度使い切ってしまうためと推測されます。このためかぜの回復期の数日間は無理をしないようにしましょう。
Q2:インフルエンザはどうして怖いのですか?
A2:インフルエンザはインフルエンザウィルスによって引き起こされる呼吸器を犯す力の強い感染症です。
インフルエンザの感染力は極めて強く、冬になると毎年のように流行を繰り返し、しばしば爆発的な流行となり、家族全員がかかって次々と来院されることもまれではありません。
インフルエンザはウィルス疾患であるために自然治癒傾向のある病気ですが、中には重大な合併症を起こすことがあるので注意が必要な病気です。昨今、子どものインフルエンザ脳炎や高齢者施設で集団感染の結果、死亡者が報告されるなど、今更ながらインフルエンザの脅威が実感されます。
またインフルエンザにかかったときに使用される解熱剤の種類によっては、重篤な副作用が出現しやすいことも注意すべきです。古くから解熱剤としてはアスピリンが使用されてきましたが、インフルエンザや水ぼうそう(水痘)などにアスピリンを使用すると急性脳症(ライ症候群)を起こしやすいことが報告されてきました。
また、インフルエンザ脳炎とある種の解熱剤との関係が考えられていて、インフルエンザのときには解熱剤の選択にも注意を払わなければなりません。
インフルエンザは自然経過の中でも気管支炎や中耳炎を頻繁に起こしてきます。とくに小さい子どもや高齢者では、気管支炎から肺炎を起こしやすくなります。これらのような理由から、インフルエンザは現在でも注意すべき感染症として君臨しています。
Q3:インフルエンザにかかりやすい環境はありますか?
A3:インフルエンザの感染様式は典型的な飛沫感染(空気感染)で、潜伏期間は数日間と短いものと考えられ、潜伏期と発病後数日が感染力が強くなります。
そうするとインフルエンザウィルスに罹患してから一週間近くが感染力のある時期となります。このような時期に学校や職場など集団生活の場に出かけると、人に感染させる機会が増え、次から次へと爆発的に感染していきます。
しかしよくみると人の集まる場所でも感染しやすい場所としにくい場所があるように思われます。すなわち教室や職場、電車の中など閉めきった閉鎖的な空間に一定時間こもっているとインフルエンザにかかる機会が増えてきます。
逆に人の流れや動きのある場所(たとえばスーパーマーケットなどでの買い物、駅の構内など)では空気の流れができるせいかかかりにくいと思われます。
こうして考えてみると冬場は空気の乾燥や気温の変化などでインフルエンザの流行しやすい環境にあるものの、空気の入れ換えに留意するだけでも予防効果があることが期待されます。
さらにのど(咽頭)が弱くなる環境は空気の乾燥と気温差であることを考えて、極端な暖房による気温差や空気の乾燥は防ぐべきでしょう。
Q4:家族がインフルエンザにかかったとき、感染しないための工夫はありますか?
A4:インフルエンザは強い感染力がありますが、全員にかかるわけではありません。
家庭内で感染を起こしやすい環境としては、次のような場合が考えられます。
インフルエンザの患者と同じ部屋で寝たり、同じ部屋でテレビを見たりして過ごす時間が長くなるとかかりやすくなると思われます。小学校の授業時間が40分くらいとすると、家庭でも30~40分くらい閉めきった部屋でいっしょに過ごすと、感染しやすくなるものと推測されます。
家庭内でインフルエンザにかからない工夫としては、寝室を同じ部屋にしない、テレビや食事でいっしょに過ごす時間をできるだけ短くするなどが考えられます。もちろん空気の乾燥や極端な暖房は控えるべきでしょう。
Q5:インフルエンザの予防接種は子どもは2回で、大人は1回でいい理由?
A5:インフルエンザワクチンの有効性は、ワクチン株と流行株とが一致した場合は、発病予防効果が70~90%です。
小学生以上の学童でも約80%程度の感染防止効果が期待できます。低年齢になるとワクチン効果が低下し、2~6歳の幼児では50%くらいです。これは幼児では感染歴のない例が多くなり、現在行われている不活化ワクチン接種では、抗体価を上昇させるのが困難な場合があるからです。
現在、弱毒生ワクチンの開発が進められており、近い将来利用できるようになるものと期待されます。生ワクチンは鼻から噴霧することができ、抗体を保有していない乳幼児でも高い有用性があると考えられています。注射でなく、鼻から噴霧できることも子どもにとって大きなメリットです。
1回でよいか、2回の方がよいかに関しては、小児では2回、成人から高齢者では1~2回とされています。成人はインフルエンザの感染歴のある人が多く、不完全ながら抗体が残っています。このような状態でワクチンを接種すると爆発的に抗体産生が起こり、1回の接種で充分抗体の量が産生されます(これをブースター効果といいます)。このような時に仮に2回目を注射しても、1回目に比べてそれほど抗体の量は増えることはありません。
ワクチン利用者の負担、手間や供給量などを考えると、「たいていの人は1回接種でよいが、どうしても心配な人は2回接種してもよい」というのが原則でしょう。諸外国では1回接種を原則としているところも多く、日本では添付書には「成人から高齢者では1~2回接種する」となっています。
小児ではインフルエンザの感染歴がないことが多いため、1回目の接種に続いて1~4週の間に2回目を接種することになっています。1回目の接種後、数日後から抗体が増え始めますが、このままでは速やかに下がってしまいます。
2回目を接種するとブースター効果により、抗体価が急上昇し、約5ヶ月持続します。インフルエンザワクチンの接種間隔は、4週間が最もよいといわれています。1回目を接種してから2週後から抗体産生が始まり、約5ヶ月持続すると考えられています。
成人と小児の境をどのあたりに置くかは医師によって異なってくるでしょう。実際には中学生や高校生くらいになると受験などを除いては、予防接種を希望されることはあまり多くありません。受験生の場合には確実な方法をとって2回接種しておくほうがよいでしょう。
成人といっても学生や若い社会人が希望されることも少なく、中年くらいから希望者が多くなります。したがって大人の多くの人は1回の接種ですんでしまいます。本院では現時点では20歳以下は2回、それ以上は1回を基準にしています。
Q6:インフルエンザの予防接種はどのような人が必要ですか?
A6:欧米では、インフルエンザは高齢者の病気として認識され、ワクチン接種が積極的に推進されてきました。
一方、小児に対しては、欧米ではインフルエンザワクチン接種はあまり実施されていません。小児ではインフルエンザによる死亡例はまれであること、入院原因としての重要性が理解されなかったことなどがその理由です。
最近、米国で小児の入院理由としてインフルエンザが重要であることが明らかにされ、健康小児へのインフルエンザワクチン接種が議論されています。
日本ではインフルエンザに対する小児科医の関心は以前から高く、1994年に学童の集団接種が中止され、一時的にワクチン接種は激減しましたが、その後小児のワクチン接種率は次第に上昇しつつあります。
インフルエンザによる入院の主体は学童ではなく、4~5歳以下の低年齢の乳幼児です。しかし乳児の入院は比較的少なく、1歳以降急増します。
最近ではインフルエンザ脳症も問題となっており、学童よりも乳幼児に対してワクチン接種などの有効なインフルエンザ予防対策が望まれます。
高齢者に対しては欧米では以前から盛んにワクチン接種が勧められてきました。従来ワクチンの接種添付書には接種要注意者として、「心臓血管疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患および発育障害などの基礎疾患を有することが明らかな者」が挙げられています。高齢者にみられる各種病気が羅列されていますが、むしろこのような高齢者こそインフルエンザワクチン接種が必要な人たちと考えられます。
実際に最近のインフルエンザワクチン接種者の傾向をみていると、小児ではインフルエンザそのものへの恐怖心や脳症の予防の目的で親が希望する場合、高齢者が肺炎などの合併症の予防のために受けるケースが多いようです。さらに学童や学生、成人では学業や受験、仕事などの大切な用事で休めない などの事情があるときなどです。
インフルエンザ予防接種は大切なものですが、任意接種(本人や家族・両親の希望により受けても受けなくてもよい予防接種)であり、副反応や重篤な副作用が全くないわけではなく、予防接種を受ける場合には目的意識をしっかりと持って、なんとなく受けることがないようにすべきでしょう。
Q7:インフルエンザの予防接種はどうして毎年必要ですか?
A7:1962年から約25年間、日本では学童を対象にインフルエンザの集団接種が行われ、これを含めて全国民の20%以上がインフルエンザワクチン接種を受けていました。
折から戦後のベビーブームの影響で人口に占める学童の割合が多く、インフルエンザの流行が学校における流行で増幅され、社会全体に広がっていると考えられていました。このように集団防衛目的で学校で集団接種が行われてきました。
しかし集団防衛効果がはっきりされないことが、マスコミで大きく取り上げられた結果、ワクチン接種率は急減し、さらにマスコミ報道により、「インフルエンザワクチンは効かない、危険なワクチンである」といった誤解が国民の間に生まれてきました。
しばらくの間、インフルエンザワクチンがほとんど接種されない状況になってしまいました。しかし先進諸国では、この間も高齢者には積極的にワクチン接種が奨められ、公的補助も多くの国で行われてきました。日本でも個人の防衛の立場から、再びインフルエンザワクチン接種が普及してきたのは喜ばしいことといえましょう。
インフルエンザは、ウィルスの性質が変わりながら流行し続けるという特性があります。インフルエンザウィルスが集団の中で流行しますと、その集団の中には流行したウィルスに対する免疫ができて、それを作ったウィルスに対して最も防御作用の大きなものになります。
しかし、ウィルスは環境条件などによって少しずつ変異して、変化の仕方によっては、その集団が持っている免疫とは適合しなくなります。変異したウィルスは抗体などによって排除されることはなく、ひそかに生き残るようになります。そしてシーズン外に散発的な流行を続けながら、やがて変異したウィルスが優勢になって、次の冬に流行が大きく拡大して繰り返すようになります。
さて現在使用されているインフルエンザの予防接種では、4ヶ月前後で抗体価が下がってくるために予防効果が少なくなります。また、その年の流行株にってワクチン株も異なってきます。以上の理由からその年の流行株を予測しながら、一年ごとにワクチン接種を受ける必要があります。
Q8:ふつうのかぜとインフルエンザはどうちがうのですか?
A8:かぜは寒さやアレルギーなどの非感染性因子とウィルス、細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどの感染性因子によって引き起こされています。
その中でウィルスによるものが圧倒的に多く、そのウィルスの種類も200種類以上に及んでいます。このようにかぜと一口に言っても、症状はさまざまであり、ときにはかぜをこじらせて重症になったり、肺炎や心臓や脳の病気など合併症を併発させたりして、危険な状態になることもある、やっかいな病気です。
インフルエンザは数あるかぜの中でも、かぜの王様といえます。毎年冬になりますと、インフルエンザが流行してきます。なぜ毎年のようにインフルエンザは流行するのでしょうか?
最大の理由は、インフルエンザウィルスは抗原が変わりながら流行するためです。それではなぜウィルスの抗原が変わるのでしょうか?
現在までの研究で分かっていることは、(1)インフルエンザウィルスのRNAは一般のウィルスと異なり、8個の分節から成り立っており、かつトリ、ウマなどの動物にも感染するインフルエンザウィルスがあって、ヒトインフルエンザウィルスとの間に遺伝的再結合を起こしやすく、したがって、抗原性の変異を起こしやすい、(2)ウィルスの気道粘膜での増殖速度がきわめて早く、潜伏期が1~2日と短い、(3)ヒト以外の野生動物の間でA型インフルエンザの流行が起きている などです。
ひとたびインフルエンザが流行すると、その伝染速度はきわめて早く、ときには世界中に大流行を引き起こし、多数の死者を発生させます。その流行の激しさ、症状の重さから、インフルエンザはただのかぜではなく、かぜの中の王様となっています。
Q9:インフルエンザの予防接種のあとはもんだ方がよいのですか?
A9:一般に予防接種後にもむ必要はないと考えられています。
その理由は、強くもむと皮下組織や筋肉に障害が起こり、ワクチン液が拡散します。そのため予防接種の種類によっては(三種混合など)、局所障害が強く出ることがあります。
また、もむことで血管が破壊され、ワクチン液が容易に血液中に侵入します。そのためもんだ方が、ショックなどの副反応を起こす可能性が高まると考えられます。
しかし子どもが痛がったり、気にしているときには、軽く押さえてあげる程度のことは安心感につながります。ただしもむことに関しては必ずしも評価が一定しているわけではありません。
インフルエンザ予防接種ガイドラインによれば、「注射後は接種部位を清潔なアルコール綿で押さえる、接種直後に液がもれて出てこないように軽く数回もむ、あまり強くもむと皮下出血を起こすのでこの点を注意する」とあります。
Q10:予防接種を受けた後、入浴や運動はどのようにすればよいですか?
A10:いつも通りの生活でかまいませんが、次のことに注意が必要です。
運 動 | 激しい運動(マラソン、水泳、部活動など)は控えます。 |
入 浴 | 接種後1時間経過し、とくに熱・体調に変化がなければかまいません。 |
飲 酒 | 深酒は体調を変化させることがあるので、24時間は控えます。 |
飲 食 | 接種後30分は控える方がよいでしょう。 |
Q11:インフルエンザの予防接種と併用する肺炎の予防接種があると聞きましたが?
A11:インフルエンザワクチンと肺炎の原因となる肺炎球菌ワクチンを同時に接種することができます。
インフルエンザウィルスそれ自体肺炎を起こすことがありますが、ウィルスにより気道の防御機能が破壊され、細菌による二次感染のために肺炎を起こすことがあります。細菌感染の多くは肺炎球菌によるものです。さらに抗生物質に対して肺炎球菌の耐性が強くなってきており、肺炎は治療よりも予防が大切であると最近は言われています。
肺炎球菌ワクチンは65歳以上の高齢者や、65歳以下でも基礎疾患を持っている人は予防接種が勧められます。一度接種すると5年以上効果が持続するために、再接種の必要はありません。重篤な副反応もほとんどみられません。
インフルエンザワクチンと肺炎球ワクチンとの併用は、ふつうは一週間以上間隔をあけて注射しますが、同じ日に同時に注射することもできます(この場合、反対の腕にします)。
Q12:新種のインフルエンザが流行するかもしれないと言われていますが本当ですか?
A12:インフルエンザの重要な特徴はとくに爆発的な大流行を起こすことです。
20世紀に起きた大きな流行は、1918年のいわゆるスペインかぜ、1957年のアジアかぜ、1968年の香港かぜ、1977年のソ連かぜです。その中でもスペインかぜは20世紀最大の疫病となりました。
スペインかぜは第一次世界大戦の最終局面、1918年春に起こり、夏にいったん終息したかにみえましたが、秋にふたたび流行が始まりました。そして翌年の春までに歴史上かって例をみなかったほどの犠牲者を出しました。
全世界の死亡者数は記録に残っているだけでも2000万人、実際にはその倍の4000万人を超すと推定されています。この年に流行したインフルエンザがどうして世界的に大流行を引き起こし、多数の死亡者を出したかは現在なお明らかにされていません。
インフルエンザウィルスはときどき新型ウィルスが出現して、全世界にわたる流行を引き起こしています。そしてそんほとんどが中国大陸から起こっています。
その理由としてシベリアの湖沼に生息するカモが新型ウィルス出現の源と考えられています。野生のカモは腸内にインフルエンザウィルスを保有していても発病することはなく、湖沼の水にウィルスを排出しています。このウィルスは水を介して他の水鳥に感染を起こします。また、渡り鳥として中国南部に飛来するカモは、そこで豚にインフルエンザウィルスの感染を起こします。
豚の呼吸器はカモとヒトのインフルエンザウィルスの両方に感受性を持っており、ときに同時にカモとヒトのインフルエンザウィルスに感染することがあります。
このような状態で、トリのウィルスの一部とヒトのウィルスの一部の間で、遺伝子の組み換えが起こることがあります。こうして生じるウィルスが、新型インフルエンザの原因となります。
スペインかぜがどうして全世界に大流行を引き起こし、多数の死亡者を出したかはっきりしない以上、将来のインフルエンザの流行を予測することは困難です。しかしインフルエンザは数十年に一度世界的に大流行を引き起こし、多数の犠牲者を出してきたことも事実です。
2000年前後からふたたびインフルエンザの世界的な大流行が起こるのではないかと、専門家から警鐘が鳴らされるようになってきました。このようなありがたくない自然からの贈り物はごめん被りたいものです。
Q13:インフルエンザでは何日くらい学校や仕事を休む必要がありますか?
A13:インフルエンザは高熱と咳を起こしてきますが、こじれないで治る場合には3,4日で熱が下がってきます。
しかしこれでインフルエンザが治ったと思ったら大間違いです。インフルエンザウィルスの活動が終息7から8日以降でこの間はまだインフルエンザウィルスとの戦いは続いています。一度下がった熱が再び出てきたときには、インフルエンザがこじれて肺炎を起こしかかっている可能性が高いときです。
すでに述べてきたようにインフルエンザなどのウィルスに感染すると私たちのからだはさまざまな形で防御機能(これを免疫機能といいます)を働かせます。ウィルスとの戦いがひどいほど、防御機能を総動員して戦うことになります。
3,4日で熱が下がってきたのはこの戦いに何とか勝利をおさめかかってきたときです。しかしこのようなときに治ったと誤解して無理をすると、細菌による二次感染を起こしやすくなります。一方、からだの中ではウィルスや細菌との防衛線のために戦力を使い果たしているために、十分な戦力(免疫)で戦いに臨むことが困難になります。
こうしてこじれていくわけです。熱が下がっても2,3日は休養をとることが望ましいといわれるゆえんです。熱が出た日数だけ休養をとるように言い伝えられてきましたが、昔の人の知恵でしょう。
*本HPもご覧ください。
かぜ一般-Q15
Q14:インフルエンザでせきが多くなるのはどうしてですか?
A14:インフルエンザはインフルエンザウィルスによって起こる急性呼吸器疾患です。
せきやたんなどの呼吸器症状は発熱に1~2日遅れて始まることが多く、せきは次第に強くなり、解熱傾向に向かう第4病日ころが最も強くなります。このようにせきは熱が下がってからも3~4日ははげしく続きますが、一週間くらいの経過で軽くなっていきます。
インフルエンザは呼吸器系感染症であるため、急性気管支炎はほとんどの例に、中耳炎はかなりの小児のインフルエンザでみられます。もっとも重要な合併症は肺炎で、インフルエンザに伴う肺炎には一時的なウィルス性肺炎、二次的な細菌性肺炎、および両者の混合した肺炎があります。
一時的なウィルス性肺炎よりも細菌性および混合した肺炎の方がはるかに多くみられます。インフルエンザの流行期にはインフルエンザ菌や肺炎球菌などによる肺炎が増加してきます。
インフルエンザがこじれて肺炎を起こしているかどうかは胸部レントゲンや血液検査で調べることができます。一般にインフルエンザでは発熱が4~5日で下がってくるのに対し、こじれて肺炎を起こしてくると熱が下がらないで、高熱とせきが持続するようになります。
このように4~5日たっても熱が下がらないときにはこじれて肺炎を起こしていないか疑っていく必要があります。
Q15:インフルエンザの潜伏期間はどれくらいですか、またどのくらい感染力が持続しますか?
A15:インフルエンザウィルスは鼻や口から侵入し、上気道粘膜(鼻や咽頭など)の細胞に感染します。
その間にウィルスはそこで増殖し、さらに隣接する細胞に感染を繰り返してきます(潜伏期)。こうした1~2日の潜伏期のあとに急激に高熱を生じて発病してきます。ウィルス増殖は極期を迎えたあとにやや遅れて出てくる抗体によって排除され減少していきます。こうして回復期に向かっていきます。
インフルエンザの感染は典型的な飛沫感染(くしゃみやせきによりウィルスが排出されて感染を起こします)で、潜伏期から発病数日間が濃厚感染源と考えられます。
流行のはじめ、それも比較的狭い地域をみると、当初は少数の、家族内の発病と感染といった段階があり、ついで学校、幼稚園、保育園などの集団生活の場で小児がまず感染し、それが家庭に持ちこまれて流行が大きく拡大していきます。この時点でその地域でのインフルエンザの流行として認識されるようになります。
学校での流行をみるとクラス単位、学年単位で流行が移っていくのがはっきりと分かることがあります。学校や家庭での感染の様子をみていると、密閉された空間の中(クラスや家庭の居間、寝室)に一定時間以上(数十分か?)いるときに感染しやすくなる印象があります。
したがって空気の流れをよくするような配慮(窓を開けて換気に心がけるなど)や患者と長時間同じ部屋にいない工夫(患児といっしょの部屋で寝ないなど)、人の集まる電車の中などではマスクをつけるなどの工夫をするだけでもかなり感染を予防できるのではないかと思われます。
Q16:インフルエンザには特効薬があると聞きましたが?
A16:従来からかぜに効くくすりはないといわれてきましたが、インフルエンザに対しては抗ウィルス薬が利用でき、インフルエンザにかかっても病気の期間や発熱などの症状の重さを著しく軽くすることが可能になってきました。
抗ウィルス薬とはウィルスの増殖を抑える働きのある薬のことで、インフルエンザの抗ウィルス薬は重大な副作用も報告されておらず、広く使用されるようになってきました。
インフルエンザウィルスは体の中に入ってくると早期に急激に増える特徴があります。そのため抗ウィルス薬はできるだけ早期に使用しないと効果は期待できません。ふつう抗ウィルス薬は発病後48時間以内に使用することが条件とされています。
現在使用される抗ウィルス薬といわれるものには3種類あります。その一つはアマンタジン(商品名:シンメトリル)で、この薬はパーキンソン氏病や脳梗塞後遺症の治療薬としての長い歴史があります。日本でのインフルエンザに対する使用量は100mgと決められており、米国の200mgの半分になっています。
使用期間は7日間までとなっていますが、5日くらいの投与で十分かと思われます。多量に使用すると夜間などに不穏状態となったり幻覚が現れることがありますが、100mgの比較的低容量ではそのような副作用はまず現れることはありません。
安価な薬ですが耐性が生じやすいといわれています。A型インフルエンザのみに有効です(A型は冬季に大流行するおもなインフルエンザで、B型は春先に小流行を起こします)。インフルエンザの抗ウィルス薬というとこれから述べる薬がおもに使用されるようになり、アマンタジンが軽視される傾向があるのは残念なことです。
現在おもに使用されている抗ウィルス薬はリン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)とザナミビル(商品名:リレンザ)の2つです。前者は内服薬で、後者は吸入薬です。
これらの薬はA型とB型の両方のインフルエンザに有効で、耐性も生じにくいといわれています。両者とも高価な薬です。
内服薬のタミフルが使用されることが多いと思われます。カプセルと小児用のドライシロップとが利用でき、使用期間は5日間までと決められています。実際にタミフルを早期に内服すると、2カプセル(一日分)を内服すると、速やかに熱が下がり始めるほどの劇的な効果があります。
それでは何日分を内服すればよいのでしょうか?5日までと決められていますが、高価な薬であり、また流行時には薬が不足することも考えられ、実際には3日くらいで十分ではないかと思われます。タミフルの副作用としては重大なものはありませんが、胃のむかむかなどの消化器症状が現れることがあります。
吸入薬リレンザも一日2回の吸入で5日までと決められています。吸入の特徴は直接に患部の上気道に噴霧できることです。高い効果が期待でき、副作用もほとんどみられません。しかし内服に比べて吸入は使用方法がややむつかしいため、吸入方法に習熟する必要があります。
Q17:インフルエンザの特効薬はすべての患者に必要ですか?
A17:薬の供給量や医療費の問題が明らかになるにつれて、インフルエンザに対する抗ウィルス薬がすべての患者に必要かどうか考えさせられます。
私見ですが、これらの抗ウィルス薬はインフルエンザがひどくなりやすい高齢者や小児にまず優先的に使用されるべきと考えられます。
中学・高校生や成人は体力に余裕があるため、必ずしも抗ウィルス薬は必要ないものと思われます。インフルエンザといえばすぐに特定の抗ウィルス薬と結びつけることは、異常と思えなくもありません。
インフルエンザの大流行の年に薬の供給量が追いつかなくなったことがありました。マスコミでこの事実が報道されるやいなや、薬を求めて大騒ぎが起こりました。
このような高価な薬が自由に利用できる日本は恵まれた数少ない国の中に含まれ、世界中には利用したくても利用できない人々もたくさんいるわけです。医師には理性が求められ、患者にはある程度の節度が求められ、国には使用順位について何らかのルール作りが求められます(私見)。
Q18:インフルエンザの特効薬は予防的に飲むことはできますか?
A18:インフルエンザに対する抗ウィルス薬を予防的に内服することは許可されていません。
薬の乱用はインフルエンザウィルスが耐性を獲得する可能性が高くなり、厳に慎まなければなりません。家族の一人がインフルエンザにかかったからといって、まだ発病していない家族に抗ウィルス薬を投薬することも慎むべきです。インフルエンザの予防にはワクチン接種が可能です。
Q19:インフルエンザの診断のための検査はどのようなときに必要ですか?
A19:インフルエンザの診断はかっては流行の様子や症状から診断しなくてはなりませんでした。
最近では鼻粘膜や咽頭粘膜の粘液の一部を綿棒でぬぐって、免疫学的に調べる迅速検査が広く利用されるようになってきました。検査時間も短縮され、早いものでは十数分で結果が判定できます。検査キットによってA型、B型に区別できるものと区別できないものに分けられます。
インフルエンザの抗ウィルス薬のうち、タミフルやリレンザはA・B型の両方に有効性があるためとくに区別の必要はありません。シンメトリルはA型にのみ有効なため、A・B型が区別できる検査キットが便利でしょう。
実際に検査キットを使用してみると、かすかに陽性であったり、かぜと思えるケースにも陽性例がみられることがあり、インフルエンザかどうか判断に苦しむことがあります。流行状況や症状などから総合的に判断すべきでしょう。
さて、このような検査キットの供給量には限界があるために、インフルエンザの流行時には一気に需要が増し、検査キットが不足する事態が起こるかも分かりません。流行や症状からあきらかにインフルエンザと思えるときには検査は必ずしも必要ではないでしょう。
マスコミでインフルエンザの抗ウィルス薬や検査キットのことが広く報道されるにつれ、このような検査や薬を使わないと医師ではないような表現がなされることがありました。
さらに診療所に来られる患者の方もインフルエンザの検査や抗ウィルス薬の処方を当然のように思う風潮ができあがってきました。しかしすべての人にこのような検査や薬が必要かどうか、医療費の面からも一考を要するでしょう(私見)。
Q20:インフルエンザのときの解熱剤の使用上の注意は?
A20:インフルエンザにかかったときには、インフルエンザ脳症の発症の面、アスピリンによるライ症候群の発症の面から解熱剤の選択には注意を要します。
インフルエンザ脳症はインフルエンザ感染による神経合併症とされていますが、その発生機序は明らかではありません。インフルエンザ脳症は幼児に多く、発熱してから24時間以内に起こるのが特徴で、急な高熱から意識障害、けいれん発作などの神経症状が現れてきます。
インフルエンザ脳症を発症した患者において、ジクリフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)を使用した群は、使用しなかった群に比べて有意に死亡率が高かったため、ジクロフェナクナトリウムをはじめ非ステロイド系抗炎症剤は使用しないように通達が出されました。
しかし解熱剤を使用していないケースでも約25%の死亡率が報告されており、インフルエンザ脳症の発症の原因として、非ステロイド系抗消炎剤が原因とは考えられません。
現時点ではインフルエンザ感染が脳症発症の引き金になっていると考えられるため、ワクチン接種によりインフルエンザ感染を予防することが最も効果的な対策と考えられています。
インフルエンザに効果的な抗ウィルス薬が使用されるようになってきましたが、これらの抗ウィルス薬が脳症発症の予防に役立っているかは明らかではありません。しかし、早期に使用してウィルス増殖を抑えることの意義はあるものと考えられます。
ライ症候群ではインフルエンザや水ぼうそう(水痘)、かぜなどのウィルス疾患に感染後、一週間以内に頑固なおう吐が起こってきます。おう吐の出現とほぼ同時期から急性脳症の症状が始まります。はじめは「いやにおとなしい」「無関心さ」が起こり、ついで混乱状態、精神錯乱、けいれん、せん妄、昏睡と急激に神経症状が悪化していきます。
このような神経症状は脳浮腫による脳圧亢進のために起こると考えられています。初期段階では熱はみられません。血液検査では急性肝不全の所見が現れてきます。ライ症候群の発症に解熱剤として使用されるアスピリンが関連しているのではないかと考えられるようになり、インフルエンザや水ぼうそうではアスピリンの使用は禁止されました。
しかしアスピリンとライ症候群との関連が示唆された米国の例ではアスピリンが多量摂取された例であり、本邦のように比較的少量の使用量ではライ症候群との関連性は明らかではありません。
このような理由から、現在インフルエンザの発熱には、アセトアミノフェン(商品名:カロナール、アルピニー座薬など)がおもに使用されるようになってきました。これはアセトアミノフェンにはインフルエンザ脳症やライ症候群との関連性が現時点では少ないと考えられているからです。
Q21:A型とB型インフルエンザについて教えてください。
A21:インフルエンザウィルスにはA型、B型、C型がありますが、この中で大きな流行を引き起こして問題となるのはA型とB型です。
B型はA型に比べて症状が軽くてすむことが多く、冬季にも流行しますが春先にも流行することがあります。A型ウィルスは冬季のインフルエンザ流行の中心をなす型です。
A型は流行のたびに軽微な抗原的変異を起こしやすく、そのため巧みに人の免疫機構から逃れて毎年流行を引き起こすことになります。抗原的変異が大きく新しいウィルスの抗原性が強いほど症状も強く、かって一度A型にかかったことのある人も感染しやすくなり、大きな流行を起こすことになります。
このようにA型はマイナーチェンジを繰り返しながら、数年から十数年単位で流行が続きますが、突然その姿を変えて別のタイプに変わることがあります。フルモデルチェンジで新型インフルエンザが登場することになります。過去に1918年に始まったスペインかぜ、1957年からはアジアかぜ、1968年からは香港かぜ、1977年からはソ連かぜが始まりました。
現在流行しているのはA香港型、Aソ連型、B型の3種類ですが、これまでのインフルエンザの歴史をみればいつ新型のインフルエンザが出現してもおかしくない状況といえます。新型インフルエンザが出現すれば免疫を持っている人はいないわけで、世界的な大流行を起こして甚大な被害を引き起こす危険性が懸念されています。
A型やB型のインフルエンザウイルスの表面からは、H蛋白(赤血球凝集素)、N蛋白(ノイラミニダーゼ)という2種類の蛋白がウニの棘のように突き出ています。これら2つの蛋白はスパイク蛋白と呼ばれ、ウイルスの感染に重要な働きをしています。ヒトがあるインフルエンザウイルスに対して免疫を持っていても、異なるスパイク蛋白をもつウイルスに対してはその免疫が効かず感染してしまいます。
A/ソ連型(H1N1)インフルエンザにかかったあとA/香港型(H3N2)にかかったり、A型インフルエンザにかかったあとB型にかかったりすることがあるのはこのためです。A型インフルエンザウイルスは、H、N蛋白とも複数の種類があり、その組合せで更に亜型に分類されます。例えば、香港型といわれるウイルスはH蛋白が3、N蛋白が2という番号の組合せでH3N2となりますし、ソ連型はH1N1です。H1、H2、H3はヒトの間で感染が起こり、流行株となりえます。
B型インフルエンザウイルスではそれぞれ1種類で、H, Nの組合せによる分類は行われません。
Q22:インフルエンザの予防接種はいつころまでにすませばよいですか?
A22:12月中旬までに接種をすまされることをお勧めします。
インフルエンザに対するワクチンは、その効果が現れるまで約2週間程度かかり、約5ヶ月間その効果が持続することと、多少地域差はありますが、我が国のインフルエンザの流行は12月下旬から3月上旬が中心になりますので、12月中旬までに接種をすまされることをお勧めします。
2回接種では、2回目は1回目から1~4週間あけて接種しますので、1回目は早めに接種しましょう。
Q23:インフルエンザワクチンの接種は何回必要ですか?
A23:13歳以上の方は、1回接種を原則としています。
ワクチンの添付文書には「13歳以上のものは1回または2回注射」と記載されていますが、健康な成人の方や基礎疾患(慢性疾患)のある方を対象に行われた研究から、インフルエンザワクチン0.5mLの1回接種で、2回接種と同等の抗体価の上昇が得られるとの報告があります。
ただし、医学的な理由により、医師が2回接種を必要と判断した場合は、その限りではありません。
接種回数が1回か2回かの最終的判断は、接種する医師の判断によりますので、接種の際にはこれまでのインフルエンザにかかったことのあるなし、ワクチン接種のあるなしとその時期、そして現在の体調などを担当医師に十分伝え、相談して下さい。
Q24:妊娠中でもインフルエンザの予防接種は受けられますか?
A24:インフルエンザワクチンは病原性をなくした不活化ワクチンであり、胎児に影響を与えるとは考えられていないので妊婦は接種不適当者には含まれません。
しかし、妊婦又は妊娠している可能性の高い女性に対してインフルエンザワクチン接種をしたという国内での調査成績はまだ十分に集積されていないので、現段階では予防接種によって得る利益が不明の危険性を上回るという認識が得られた場合に接種を行う、ということが適切でしょう。
米国の報告では、もし接種するなら妊娠のごく初期(妊娠13週前後まで)を除き、行うのが望ましいとされています。今のところ妊婦に接種した場合に生ずる特別な副反応の報告はありません。
Q25:インフルエンザ予防接種の副反応はどのようなものがありますか?
A25:一般的に副反応は軽微です。接種局所の反応が主であり、発赤、腫脹、疼痛をきたすことがありますが2~3日で消失します。
発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などもまれに起こります。極めてまれですが、死亡例の届け出もあります。これまでの我が国での統計では、インフルエンザワクチンによる可能性があると認定された死亡事故は約2,500万接種あたり1件です。
卵アレルギーの人には蕁麻疹、発疹、口腔のしびれ、アナフィラキシーショックなどが現れる可能性があります。また、ワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンに対するアレルギー反応としてのアナフィラキシーが報告されていましたが、現在、ゼラチンを含まない製品へと改善が進んでいます。
Q26:インフルエンザ脳症とライ症候群について教えてください。
A26:A20 をご覧ください。
リンク:インフルエンザQandA(厚生労働省)もご覧ください(Q21~Q25はこのHPを参考にしました)。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
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