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予防接種Q and A

〈予防接種10〉 パンデミックインフルエンザ

Dr.みやけ

皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「パンデミックインフルエンザ」について解説しています。 

※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。

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Q1:パンデミックインフルエンザについて教えてください。

Dr.みやけ

A1:新型インフルエンザの流行(パンデミック:汎流行)とは、大正7(1918)年に大流行したスペイン型インフルエンザ、昭和32(1957)年に大流行したアジア型インフルエンザ、昭和43(1968)年に発生した香港型インフルエンザなどのように、ヒトにとって未知のインフルエンザウイルスあるいはウイルスの再来によって、地球規模の大流行を起こすことをいいます。

パンデミックの際には国内だけでも死者が少なくとも3~4万人に達する可能性があると考えられています。平成9(1997)年に香港で鳥インフルエンザ(A/H5N1亜型)ウイルスによるヒト患者の発生が初めて確認されました。
また近年、鳥インフルエンザ(A/H5N1亜型)の拡大、そしてその流行の中からヒト感染例が増加し、パンデミックインフルエンザ発生への危機がさらに高まったことから、各国で様々な対策が取られ始めました。

平成13/14(2001/2002)シーズン、英国、イスラエル、エジプトなどでヒトから分離されていたA/H1N2亜型(H1N1亜型とH3N2亜型が組換えを生じたもの)が、平成14(2002)年わが国でも初めて分離されました。この(新型)ウイルスは、ほどなく消失しました。
平成15~16(2003~2004)年頃から韓国、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ベトナム、ラオス等、東南アジア地域を中心にトリの間でA/H5N1亜型の流行が認められ、わが国でも山口県、大分県、京都府でニワトリあるいはチャボのA/H5N1感染事例が発生しました。その後もトリの間でのA/H5N1の流行は拡大しつづけています。
世界では感染したトリなどとの濃厚接触を中心にしたヒトのA/H5N1感染発症事例が出現しており、平成15(2003)年にはベトナムで3名、中国で1名(4名とも死亡)であった患者数が、平成23(2011)年8月2日現在、WHOへ報告されたヒトのA/H5N1亜型感染発症確定例数は、世界15カ国で563名、この内330名が死亡しています。
平成23(2011)年は8月2日現在、エジプト(31名発症死亡者12)とインドネシア(7名発症死亡者5)とカンボジア(7名発症死亡者7)とバングラデシュ(2名発症死亡者0)で計47名が発症し、うち24名が死亡しています。

インドネシア、ベトナムなどにおいて、ヒトからヒトヘの感染伝播が起こっていると考えられた事例がありましたが、家族内での極めて限定的な感染で、その後の拡大は見られていません。また、ウイルス学的にもこれらはヒト型への遺伝子の変異はなかったとされています。

わが国では、京都で発生したA/H5N1感染事例に際して、不十分な防護により処分にたずさわった人の間に少数ながら感染例が確認されましたが、発症例は認められていません。
平成17(2005)年、茨城県でニワトリのA/H5N2感染事例が発生しましたが、対応が早期に実施されたことによって終息しました。茨城県の事例でも、ヒトでのA/H5N2の抗体陽性者がいたことが明らかになっていますが、発症者はありませんでした。
平成21(2009)年には愛知県において、ウズラの間で高病原性鳥インフルエンザA/H7N6の発生がみられましたが、殺処分によって終息し、ヒトでの発生はありませんでした。

平成21(2009)年春、新しいインフルエンザウイルスが発生拡大し、WHOはこの流行をパンデミックと捉えました。これはこれまでヒトの間で流行していなかった亜型によるパンデミックではなく、新しいA/H1N1亜型のインフルエンザウイルス(A/H1N1pdm)によるパンデミックの発生でした。
このウイルスに対するワクチンは、国内外で製造が行われ、国内では初年度は季節性インフルエンザワクチンとは別に、A型インフルエンザHAワクチン(H1N1株):いわゆる新型インフルエンザワクチンとして製造が行われました。従来の季節性インフルエンザワクチンと同様の製造方法を用いて製造が行われました。

平成22/23(2010/11)シーズンから、平成21(2009)年に発生したパンデミックインフルエンザウイルスA/H1N1pdmは季節性インフルエンザワクチンに含まれて製造され、平成23/24(2011/12)シーズンも同様となっています。

今般のパンデミックインフルエンザ(A/H1N1)については、平成22(2010)年3月31日に、最初の流行は沈静化したとの発表がなされましたが、その後も、再流行の可能性は続いていることなどを踏まえ、厚生労働省は引き続き、重症患者増加の可能性等を踏まえた医療体制の構築や、感染予防の呼びかけ等に努めるとともに、パンデミックインフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種事業やサーペイランスを継続して実施し、その流行状況等を注視しています。

パンデミックインフルエンザ(A/H1N1)の昨シーズン平成22/23(2010/11)シーズンの流行状況については、12月半ばに流行入りした後、1月末には流行のピークを迎え、第22週に定点あたり報告数が1.0未満となりました。平成22/23(2010/2011)シーズンの流行状況を注視してきたところ、死亡や重症患者は、平成21/22(2009/2010)シーズンに比べて高い年齢層に移ってきているほか、パンデミックインフルエンザ(A/H1N1)のウイルスに加え、A香港型やB型のウイルスも検出されているなど、パンデミックインフルエンザ(A/H1N1)が発生する前の季節性インフルエンザと似た流行状況になりました。

このような状況を踏まえて、感染症法第44条の2第3項の規定に基づき、平成21(2009)年のパンデミックインフルエンザ(A/H1N1)については、通常の季節性インフルエンザとして取り扱い、その対策も通常のインフルエンザ対策に移行されました。
また、平成23(2011)年4月1日以降、その名称については、「インフルエンザ(H1N1エイチイチエヌイチ)2009ニセンキュウ」となりました。

Q2:沈降インフルエンザワクチン(H5N1株)(いわゆるプレパンデミックワクチン)について教えてください。

Dr.みやけ

A2:国産の沈降インフルエンザワクチン(H5N1株)(いわゆるプレパンデミックワクチン)は、WHOで推奨され、また厚生労働省より指定された高病原性鳥インフルエンザウイルス株A/H5N1を、リバースジェネテイクス法によって既存弱毒インフルエンザウイルス株と遺伝子組み換えを行い、これによって得られた弱毒ウイルス株を原材料として、それを発育鶏卵の尿膜腔内に抗菌薬等とともに接種して培養し、増殖したウイルスを含む尿膜腔液を採取します。

これをゾーナル遠心器を用いてショ糖密度勾配遠心法により精製濃縮し、ホルマリンにより不活化した後、免疫原性を高めるために免疫補助剤(アジュバント)として水酸化アルミニウムゲルを加えて吸着させて不溶性とし、有効成分であるウイルスのHA含量が規定量となるように、リン酸塩緩衝塩化ナトリウム液で希釈調製した液剤(全粒子型インフルエンザワクチン)です。これをプレパンデミックワクチン(あるいはプロトタイプワクチン)といいます。

鳥インフルエンザA/H5N1が遺伝子変異などによりヒト型に置き換わり、パンデミック株になった時(あるいはなりそうな時)、そのウイルス株を上記のような方法でワクチン候補株として、製造することが計画されています。これがパンデミックワクチンになります。

Q3:予防接種スケジュールと副反応について教えてください。

Dr.みやけ

A3:13歳以上の者に対し、通常、0.5 mLをおよそ3週間の間隔をおいて、筋肉内もしくは皮下に2回接種します。

承認時までの臨床成績による主な副反応は、第Ⅱ/Ⅲ相試験において局所反応として接種部位における疼痛(71.3~72.7%)、紅斑(14.0~86.0%)、腫脹(12.7~58.0%)、そうよう感(8.0~68.7%)、硬結(0.7%)などがあります。
全身反応としては、発熱(0.7~2.7%)、頭痛(3.3~6.7%)、倦怠感(12.7%)などが見られていますが、重大な副反応は見られていませんでした。

Q4:A/H5N1亜型のインフルエンザの流行は本当にあるのですか?

Dr.みやけ

A4:ヒトからヒトへ感染が拡大する新型インフルエンザの世界的流行(パンデミック)はこれまでに10年から40年程度の周期で起きています。

幸いこの40年間は発生がありませんでしたが、平成21(2009)年春に、新しい亜型ではありませんが、これまで認められていなかった新しいA/H1N1亜型のインフルエンザウイルスによる流行が、メキシコ、米国から発生し、その後全世界に拡大したため、平成21(2009)年6月11日に、WHOはパンデミックを宣言しました。

現在地球規模で発生している高病原性鳥インフルエンザA/H5N1ウイルスが、ヒトに感染しやすい型へ変異し、人類にとって新型インフルエンザウイルスが発症し、急速にヒトに流行が拡大する(パンデミックになる)ことが危惧されていることには変わりはありません。

過去最悪のパンデミックはスペイン型インフルエンザであり、この規模をあり得るレベルとして様々な準備が進められてきましたが、平成21(2009)年に発生したパンデミックは、病原性は季節性インフルエンザと同等と考えられ、行政的にも平成23(2011)年4月1日に季節性インフルエンザに移行したと厚生労働省から発表され、国による新たな行動計画、そして対策ガイドラインが計画されているところです。
ただし、今後の抗原性の変異などについては、これまでの季節性インフルエンザウイルス同様、観察を続けていく必要があります。

なお、人類が過去に流行を受けたことのあるウイルス(例えばアジア型A/H2N2など)が再来しても、免疫を持つヒトは限られており、パンデミックの原因となることが考えられています。

Q5:新型インフルエンザの世界的流行(パンデミック)を阻止することはできないのです か?

Dr.みやけ

A5:パンデミックを完全に阻止することは、現代の科学では不可能であると考えざるを得ません。

しかし新型インフルエンザの発生が初期段階で、その範囲がごく限られているような場合においては、抗インフルエンザウイルス薬の内服と移動制限を行うことで、流行の拡大を遅らせ、その間に次の対策(新型インフルエンザワクチンの製造等)を講じることができるのではないかとの研究もあります。

平成21(2009)年に発生したパンデミックインフルエンザの国内初発例は同年5月でしたが、地域での徹底した感染対策により一時的に流行の拡大を遅らせることができ、その間に次の対策を準備することができました。わが国は他の先進国と比較しても致死率が低く、医療および対策の効果が示されています。

しかし、今後病原性の高い新型インフルエンザウイルスによるパンデミックが生じた場合、今回と同様の方法でどの程度成功するかは未知であり、さらなる対策を進めることが必要です。
初めて発生した地域で、その発生をいかに早期に発見し適切な対策をとり、また流行的発生になった場合は、その健康被害の程度、社会機能の低下を少しでも縮小させ、人々の混乱を軽減することが重要で、そのために種々の備えを行う必要があります。
その備えは、医療・保健関連部門だけではなく、広く社会全体で取り組むことが必要です。

Q6:プレパンデミックワクチンとパンデミックワクチンの違いを教えてください。

Dr.みやけ

A6:新型インフルエンザに対して効果が期待できるワクチンとして、プレパンデミックワクチンとパンデミックワクチンがあります。

プレパンデミックワクチンとは、新型インフルエンザウイルスが大流行(パンデミック)を起こす前に、鳥-ヒト感染の患者又は鳥から分離されたウイルスを基に製造されるワクチンを指します。
国は現在流行している鳥インフルエンザウイルス(A/H5N1)に対するワクチンをプレパンデミックワクチンの原材料として製造、備蓄しています。

パンデミックワクチンとは、ヒトヒト感染を引き起こしているウイルスを基に製造されるワクチンです。プレパンデミックワクチンと異なり、ワクチンの効果はより高いと考えられますが、パンデミックワクチンは実際に新型インフルエンザが発生しなければ製造できないため、現時点で製造、備蓄は行っていません。

Q7:プレパンデミックワクチンについてもっと詳しく教えてください。

Dr.みやけ

A7:パンデミックワクチンは、新しいインフルエンザが発生しないと原材料が入手できず、製造することができません。

平成21(2009)年に発生したA/H1N1pdmによるパンデミックについては、実際のウイルス株を用いてワクチンの製造が国内外で行われました。

一方、A/H5N1亜型のパンデミックワクチンについては、現時点では、パンデミックが発生していないため、ワクチンもありません。しかし、わが国を含む複数の国では、これまで鳥からヒトへ感染した事例から分離されたウイルスを基にワクチン用に開発された種ウイルスから、A/H5N1亜型のインフルエンザに対するワクチンを製造しています。

パンデミックワクチンはあくまで新型インフルエンザが発生してからでないと製造できませんし、その製造には、ウイルスが発見されてから少なくとも6カ月間かかります。このため、最初のパンデミック第一波には間に合わないので、状況によっては、少なくとも基礎免疫をつけることができる「プレパンデミックワクチン」を接種することが考えられています。

Q8:国が備蓄しているプレパンデミックワクチンの接種を受けることはできますか?

Dr.みやけ

A8:現在、政府は2.000万人分を超えるプレパンデミックワクチン(A/H5N1亜型)を備蓄していますが、プレパンデミックワクチンは、実際にこの亜型がパンデミックになった時のインフルエンザに対する有効性・安全性が十分に確認されているものではありません。

また、ワクチンはまれとはいえ一定の割合で人体に有害な副反応が出現することが避けられず、不必要な接種は避けるべきと考えられています。そのため、実際にワクチン接種を開始するのは、A/H5N1亜型によるインフルエンザのパンデミック発生が確認されてから接種開始になる予定です。

また、新しい亜型のインフルエンザが発生した場合、予防の基本は他者から感染を受ける機会を減らす(外出や集会を避ける、手洗いの励行、マスク着用等)こととなりますが、医療従事者や電気・水道等のライフライン従事者など、医療や社会生活の維持に関わっており、新しい亜型のインフルエンザの感染が拡大している状況においても業務を続けなければならない人々から、プレパンデミックワクチンの接種を行うことになります。

《参考文献》
2011
(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)

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