・・・
Q1:どうしてマラリアに注意しなければなりませんか?
A1:2002年度のWHOの報告によると、マラリアの年間感染者数は3億人で(未報告を含めると5億人?)で、140~200万人が死亡しています。
地球温暖化によりハマダラカの生息地域が拡大していること、交通手段が発達したこと などの理由から、マラリア流行地域は拡大し、現在では約100カ国が流行地に指定されており、その数は年々増加し続けています。
地域別の年間一人あたりの罹患数は、アフリカ0.55回、アジア0.015回、南米0.02回で、アフリカが極端に高くなっています。わが国では1961年に土着マラリアの根絶が宣言されましたが、年間100例以上の輸入症例があります。
Q2:マラリアはどんな病気ですか?
A2:マラリアは、マラリア原虫の種類によって、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアに分類されます。
これらのうち最も危険なのが熱帯熱マラリアで治療が遅れると、脳や肺が侵されて死に至ることがあります。わが国では例年100人以上のマラリア感染症がいますが、その約1/3は最も怖い熱帯熱マラリアです。
熱帯熱マラリアは、ハマダラカという蚊によって媒介されますが、流行地はアフリカ、東南アジア、インド、オセアニア、中南米などです。通常は感染後、1~4週間の潜伏期間を経て発症します。免疫のない日本人では、発熱症状発現5日以内に適切な治療を開始しないと予後不良であることが多いとされています(悪性マラリア)。
わが国の輸入マラリアの約7割は三日熱マラリアといわれるもので、別名良性マラリアといわれるように生命予後は比較的良好です。三日熱マラリアの潜伏期間は平均10~14日ですが、約6%は1年以上経て発病します。
マラリアで最も多い症状は発熱と悪寒で、発熱の数日前から全身倦怠や背痛、食欲不振などの不定症状を認めることがあります。発熱は間隔をあけて発熱期と無熱期を繰り返します。発熱発作の間隔はマラリアの種類によって異なります(三日熱・卵形マラリアでは48時間、四日熱マラリアでは72時間、熱帯熱マラリアでは36~48時間あるいは不規則)。
Q3:マラリアの予防接種はありますか?
A3:現在はありません。
Q4:マラリアの予防のために旅行中どんなことに注意すればよいですか?
A4:マラリアを媒介するハマダラカは多くの場合、夜間に活動しますが、ジャングル内では日中刺されることもあります。
マラリアを防ぐには蚊に刺されない工夫をすることが肝心です。
とくに夜間に外出するときには長袖、長ズボンをはき、帽子を忘れないようにします。寝るときは蚊帳を吊ります。窓やドアには蚊の侵入を防ぐために網戸をはることも大切です。ペルメスリンを主成分とする蚊取り線香も有用です。穴の開いた網戸や蚊帳を縫うための針と糸、網ひもも必需品です。
Q5:マラリアの予防内服について教えてください。
A5:以上のような蚊帳対策だけでは、マラリア予防が不可能のことがあります。
湿地帯や山林に出入りする者、農山村に宿泊する者、夜間屋外で作業する者は、マラリアに感染することは避けがたくなります。このような人たちは抗マラリア薬を定期的に予防内服する必要があります。
予防内服の場合、国内で入手可能な薬剤は限られており、抗マラリア薬の選択、入手方法、その内服期間や副作用など問題は少なくありません。また帰国後に発病した場合に受診すべき病院に関する情報など、出発する前に調べておくことが多々あります。出発前に専門家とゆっくりと相談しておく必要があります。
Q6:子どもや妊婦のマラリア流行地域での旅行について教えてください。
A6:子どもはマラリアが重症化しやすく、妊婦では母体の死亡、流産、死産などの問題があります。
なるべくマラリア流行地には連れて行かない方がよいと思われます。
バンコック、ジャカルタなど東南アジア諸国に子どもを連れて行くときは、都心部ではマラリアに感染しませんが、郊外や田舎に住むとき、あるいはインドやアフリカに住むときは、夕方は早めに家の中に入れます。僻地に行くときは子どもは都会内に残していく方が無難です。
Q7:マラリアについて相談できる病院や医師について教えてください。
A7:一般の病院・診療所ではマラリアについて相談できる専門医はまずいないと考えてください。
インターネットなどでマラリアの専門医のいる病院または企業関係のサービス機関(会員制のことが多い)を探すか、感染症科など感染症に対する専門医のいる中核病院、または大学病院の医動物学教室、寄生虫学教室、熱帯医学教室などに連絡をとり、医療機関を探す必要があります。
【マラリア治療薬の保管医療施設】
札幌市立札幌病院南ヶ丘分院 011-813-1122
仙台市立病院 消化器科 022-266-7111(3741)
群馬大 寄生虫学 027-220-7111(8022)
慈恵医大 熱帯医学 03-3433-1111(2285)
慶応大 熱帯医学・寄生虫学 03-3353-1211(2667)
東大医科研 感染免疫内科 03-3443-8111(338)
都立駒込病院 感染症科 03-3823-2101
名古屋市大 医動物学 052-853-8186
大阪市立総合医療センター 感染症センター 06-6929-3317
鳥取大 寄生虫学 0859-34-8028
徳島大 寄生虫学 0886-31-3111(2280)
長崎大熱帯医学研 臨床部門 0958-47-2111(3776)
琉球大 第一内科 098-895-3331(2435)
※このサイトは、地域医療に携わる町医者としての健康に関する情報の発信をおもな目的としています。
※写真の利用についてのお問い合わせは こちら をご覧ください。