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Q1:かぜで血液検査が必要なになるのはどうのようなときですか?
A1:かぜ症状で必要な血液検査の内容は、主に(1)白血球数の変化、(2)白血球の分類の変化、(3)炎症反応の目安であるCRPの変化、(4)肝機能の変化、(5)血小板数の変化 などです。
ふつうかぜはウィルス感染が原因で起こります。ウィルス感染では白血球数は正常か、むしろ減少してきます。これに対してかぜがこじれて細菌による二次感染を起こしてくると白血球数が増加してきます。
したがってかぜが白血球数が減少から増加に変化してきたときには細菌感染の存在を意味し、抗生物質の投与が必要なことが推測されるようになります。
また白血球は好中球、リンパ球、好酸球などから構成されています。
細菌感染では主に好中球の増加を示してきます。これに対してリンパ球の増加は小児では百日咳などでみられる他、異常なリンパ球がかぜ症状とともに出現したときにはEVウィルス感染症や白血病が考えられるなど重要な所見となります。好酸球はアレルギー疾患や寄生虫感染などで増加し、白血球の分類の変化は病気に対する重要な情報を与えてくれます。
CRPは感染症などでは炎症の強さを示す(重症度の)大切な目安となります。肺炎などを起こしたときにはCRPの変化から悪化や改善の傾向を知ることができます。
急性肝炎は初期にはかぜと変わらない症状で発症してきます。
高熱がはじめに起こり、数日後から黄だんが現れてきます。黄だんが進行すると眼球結膜(眼の白いところ)や皮膚の黄染で気がつくようになりますが、血液検査では黄だんはビリルビンの上昇として現れますが同時にGOTやGPTの上昇が起こってきます。
また尿検査でも色が黄色になりビリルビンが上昇してきます。
血小板数は直接にはかぜの症状に関与することは少ないと思われますが、血小板数の減少から血液疾患の存在が考えられたり、投与された薬の副作用が考えられることがあります。
*本HPもご覧ください(クリックしてください)。
血液検査で分かること-発熱時の検査
血液検査で分かること-肝機能検査
血液検査で分かること-貧血の検査
Q2:かぜでどんなときに胸部レントゲンが必要ですか?
A2:かぜをひいてから発熱やせきが持続するときには胸部レントゲン撮影が必要となります。
肺炎は若い人でも無理をして、休養をとらずに仕事を続けていると起こりやすくなります。ふつうかぜによる発熱は数日以内に下がってくるのがふつうです。
せきが多くて発熱が4,5日以上続くときには、肺炎を疑いながら胸部レントゲンを撮影することが大切です。肺炎に特徴的な症状はないため、聴診器だけに頼っていては見落とすことが多くなるでしょう。
かぜは万病のもとと言われますが、かぜを放置していたために心臓の病気を起こすことが稀ならずみられます。心筋炎や感染性心内膜炎、心膜炎、リウマチ性弁膜症と呼ばれる病気ですが、これらでは胸部レントゲンで心陰影が拡大して分かることがあります。
また発熱がなくてもせきが持続するときには胸部レントゲンが必要となります。最近、結核が増加してきていることが話題になっています。またマイコプラズマ肺炎といわれる大人では熱の出にくい肺炎の一種もあります。
このように原因の明らかでない発熱やせきを生じたときには胸部レントゲン撮影は簡単にできる必須の検査でしょう。
*本HPもご覧ください(クリックしてください)。
家庭での医学(子ども)-マイコプラズマ感染症・肺炎
家庭での医学(子ども)-子どもの熱
Q3:かぜで役立つ血液検査の内容は何ですか?
A3:*本HPをご覧ください。
発熱時の検査
Q4:聴診器で何が分かりますか?
A4:聴診器は主に2つの目的に使用されます。一つは心臓の中にある弁の開閉する音の変化(心音といいます)、二つは肺の呼吸音の変化をみるためです。
かぜで心音が変化することは、かぜがこじれて心膜炎や感染性心内膜炎を起こした場合の他はめったにありません。
かぜの場合、聴診器はおもに肺の呼吸音の変化をみる目的で使用されます。
たとえばせきがひどくてヒューヒュー、ピーピーといった笛を吹くような呼吸音が聞こえてくれば喘息の発作が疑われます。またゴロゴロ、プチプチといった水のアワがはじけるような音が聞こえると気管支炎や肺炎が疑われます。
聴診器による心音や呼吸音の変化だけから正確に病気の性質を判断することはかなりの技術を要します。しかし最近では心音の変化に対しては心臓超音波を組み合わせたり、呼吸音の変化に対しては胸部レントゲンや胸部CTなどを組み合わせることにより、比較的簡単に病気の性質が分かるようになってきました。
Q5:口を開けて何をみているのですか?
A5:口をあけてみえるのどの奥を咽頭といいます。その両端には(口蓋)扁桃、のどの奥の真ん中にぶら下がっているのは口蓋垂です。
こどもの感染症は口の中にいろいろな変化を伴う病気がみられます。
麻疹(はしか)では特徴的な小さな白い斑点が口の中の頬の粘膜にみられます(コプリック斑)。
また水痘(水ぼうそう)やヘルペス性歯肉口内炎、手足口病では口の中に口内炎が多発してきます。
夏かぜのひとつヘルパンギーナでは口蓋垂の周囲に口内炎ができてきます。
また、溶連菌感染症ではイチゴ舌とよばれる変化がみられることがあります。
こども、おとなを問わずかぜで最も多くみられる変化は咽頭壁の発赤でしょう。
場合によっては扁桃が肥大して扁桃炎を起こしてきます。扁桃炎に膿が付着してくる場合も多くあります。扁桃肥大は子どもでしばしばみられますがこような子どもの両親のどちらかも扁桃肥大を持っていることが多いようです。咽頭壁や扁桃の発赤がひどくなると発熱しやすくなります。
大人の扁桃炎は炎症が周囲に広がり、扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍を生じてくることがあります。この場合、痛みが強いだけでなく食事などが飲み込みにくくなったり、呼吸困難から窒息を起こすことがあり注意が必要です。このように口の中の所見はかぜに関するいろいろな情報を与えてくれます。
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Q6:耳や鼻はみなくてもよいのですか?
A6:子どもではかぜから中耳炎を起こすことはよくあります。またかぜの症状がみられなくても、急に中耳炎を起こすことがあります。
耳の中を観察することのできる簡単な器械もあり、耳の中をみることは比較的容易です。耳をみて分かることは、鼓膜や外耳道で鼓膜の内側の中耳といわれる部分を直接に見ることはできません。
中耳炎を起こしてくると鼓膜が発赤してくるので分かります。外耳炎は耳だれ(耳漏)が出ることもありますが、耳の痛みと外耳の発赤で診断ができます。
しかし子どもでは耳あかで外耳が詰まっていることも多く(耳垢塞栓といいます)、鼓膜がよく見えないこともよくあります。子どもの耳垢は取り除くことは困難で、耳鼻咽喉科の医師により取ってもらう必要があります。
鼻をみることも簡単ですが、鼻鏡でみえる範囲は鼻の穴周辺で奥はみることはできません。しかし鼻水がひどいときには、アレルギー性鼻炎や花粉症が原因ではないか鼻の中をみると診断の助けになります。鼻づまりがひどい大人で鼻の中を見ると、慢性副鼻腔炎により鼻茸がみえることがあります。
このように耳や鼻をみて得られる情報はかぜの診断に役立つことが多く、耳や鼻をみてもらっておく方が望ましいと思われます。
Q7:かぜでいくと検尿を受けましたがどうして必要ですか?
A7:かぜでなくても病院や診療所に行くと初めてのときには検尿をするところが多いと思われます。
検尿ではおもに尿中に糖やタンパクが出ていないか、黄だんや肝機能障害の目安であるビリルビンやウロビリノーゲン、タンパク質の代謝異常であるケトン体、赤血球や白血球の有無 などを調べることができます。
これらの検査で異常が認められた場合には、いろいろな病気発見のてがかりになり、内科診療には欠くことのできない検査です。
かぜの場合でも、食事が取れなくて脱水気味の時には尿検査で異常がみられます。
また高熱が出て尿中に白血球が増えていれば急性じんう炎を疑うことができます。また尿タンパクやビリルビン・ウロビリノーゲンの異常があれば、それぞれ腎機能障害や肝機能異常(急性肝炎、閉塞性黄だんなど)を示唆しています。
腹痛と尿潜血が認められたら尿管結石や急性膀胱炎などを疑います。かぜや発熱が内科のいろいろな病気の初発症状のこともあり、かぜ以外の病気発見の手がかりを得るために尿検査は簡単で重要な検査といえるでしょう。
*検尿については本HPもご覧ください。
血液検査で分かること-発熱時の検査
Q8:かぜでどんなときに血液検査が必要ですか?
A8:かぜの初期には血液検査は特に必要な検査とはいえないでしょう。
しかし1)かぜがこじれてきたとき、2)かぜの症状がみられても他の内科の病気が疑われるとき、3)いわゆるかぜ症候群の中でも特徴的な血液検査の結果から診断がつくとき などでは血液検査が必要になります。
かぜはほとんどがウィルス感染であり、特徴的な血液の変化は少ないといえます。しかし発熱が続くときに白血球の数や種類の変化が認められることがあります。
かぜがこじれて細菌感染を起こしてくると、白血球数が増えてきたり、CRPや血沈などの検査が異常を示すようになります。ふだんみられない白血球が血液中に現れるようになったり、貧血や血小板数の減少がみられたら、いろいろな血液疾患やEVウィルス感染症などが疑われます。
乳児期に多い百日咳でも、リンパ球数の増加が手がかりとなります。急性肝炎の初期症状は、発熱とかぜに似た症状で診断が困難なことがあります。数日で黄だんが出てくるので尿検査などから察しはつきますが、血液検査で肝機能の変化が重要な目安になります。
肺炎を起こしたときには、炎症反応の目安であるCRPや白血球数の変化が治ったかどうかの判定に重要です。肺炎の治療の過程では軽快していくにつれ、CRPや白血球数が正常値に近づいていきます。胸部レントゲンの陰影は少し遅れて消えていくため、血液検査の変化がより敏感な指標といえます。
また逆に、かぜ症状が続いても血液検査で大きな異常がみられないときには、こじれていないのではないかとある程度の予測をたてることができます。
*詳しくは本HPもご覧ください。
血液検査で分かること-発熱時の検査
Q9:妊娠中にレントゲンを撮影することはできますか?
A9:妊娠中にレントゲン検査を受けても、胎児には安全であることが報告されています。
妊娠に気がつかずにレントゲン検査を受けてたとしても心配はありません。それでは妊娠中に自由にレントゲンを撮影してもよいのでしょうか?胎児には影響が出ないと分かっていても、私たちのこれから何代も先の子孫に影響が出ないとは限らないと考えられています。
医師の側からして、安全だからといって妊娠中の女性に自由にレントゲン撮影を行ってもよいのでしょうか?
最近はインフォームドコンセプト(納得して診療を受けること)が強調されています。医師の一方的な意見で、治療や検査を押しつけることは許されてはいません。妊婦の気持ちを考慮するならば、よく説明して同意を得た上で、検査や治療を行うべきでしょう。
安全と分かっていても妊婦の感情を考慮すれば、不必要な検査や治療は控えるべきと思われます。また、主治医である産婦人科医の意見を求めることも大切なことです。
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