皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「ロタウィルスワクチン」について解説しています。
- 1.ロタウィルスが原因する胃腸炎について教えてください。
- 2.ロタウィルスワクチンについて教えてください。
- 3.ロタウィルスワクチンの予防接種スケジュールについて教えてください。
- 4.ロタウィルスワクチンの副反応について教えてください。
- 5.ロタウィルスワクチンの胃腸炎予防以外のメリットはありますか?
- 6.ロタウィルス胃腸炎はどの程度みられるものですか?
- 7.下痢や脱水症以外にも注意すべき症状はありますか?
- 8.ロタウィルスに感染した幼児には免疫ができるでしょうか?
- 9.ロタウィルスワクチン接種前後に、母乳を飲ませてもよいですか?
- 10.ロタウィルスワクチン接種後に吐いてしまったら、どうすればよいですか?
- 11.ロタウィルスワクチンを接種後、ワクチンウィルスは便中に排せつされますか?
- 12.ロタウィルスワクチンは他の胃腸炎にも有効ですか?
※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。
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Q1:ロタウィルスが原因する胃腸炎について教えてください。
A1:ロタウィルス胃腸炎は、乳幼児に多く起こる感染性胃腸炎のひとつで、ロタウィルスが原因です。
ウィルス粒子のタンパクの抗原性の違いにより、A~G群に分類され、ヒトからはA~C群が検出されます。その中でもA群がほとんどを占めます。
日本でのロタウィルス胃腸炎の発症は冬から春に多くみられますが、近年のA群の検出のピークは3~4月となっており、20年前のピークが冬季であったことと比較すると、シーズンとして遅くなってきています。
A群ロタウィルスが検出された胃腸炎患者は1歳、0歳、2歳の順に多く、0~2歳が4分の3を占め、0歳児では月齢6ヶ月以上が多く報告されています。生後3ヶ月までは、母体由来の免疫によって感染しても症状が出ないか、症状があっても軽くすみますが、生後3ヶ月以降に初感染すると重症化しやすくなります。とくに重症化しやすいのは生後3~23ヶ月の乳児です。
ロタウィルス胃腸炎の多くは突然のおう吐、発熱に続き、水様性下痢を起こします。発熱を伴うことが70~80%程度あり、回復には1週間ほどかかります。ほとんどの場合はとくに治療を行わなくても回復しますが、時に脱水、無熱性けいれん、肝機能障害、腎不全、脳炎・脳症などを合併することもあります。
ロタウィルスは世界中に分布し、衛生状態に関係なく5歳までにほとんどすべての乳幼児が、このウィルスに感染します。発展途上国では毎年1年間に約60万人が死亡していると報告されています。
日本での死亡例は毎年数名とまれなものの、感染の頻度は発展途上国と大きな差はなく、小学校入学前までに約2人に1人がロタウィルス胃腸炎で小児科外来を受診し、さらに外来患者の15人に1人(約7.8万人)は入院していると報告されています。
ロタウィルス胃腸炎に対して、石けんや消毒用アルコールによる消毒だけでは感染拡大予防効果が十分とは言えないため、おむつの適切な廃棄、石けんでの手洗いの徹底、ウィルスに感染した衣類などは次亜塩素酸系の消毒剤(漂白剤ほ乳瓶などの消毒液)を使用した消毒など、適切な方法で消毒する必要があります。
下痢便1g当たりに100億個程度の多量のウィルスが含まれています。また、症状快復後1週間は、多量のウィルスが便中に排出されていると言われています。
Q2:ロタウィルスワクチンについて教えてください。
A2:ロタウィルスワクチンは現在2種類のワクチンが世界で使われています。
日本では平成23年7月に、このうちの1種類が薬事法に基づいて製造販売が承認されました。このワクチンは、ロタウィルス胃腸炎患者から分離したヒトロタウィルスの病原性をほとんどなくし(弱毒化)、培養細胞で増殖させて精製した後に、シロップ状にした飲む生ワクチン(経口生ワクチン)です。
ロタウィルス胃腸炎は、初回感染時の症状がもっとも重く、2回目以降は症状が軽くなります。ヒトロタウィルスワクチンはこの性質を利用していますので、自然に感染したときと同じように、胃腸炎の重症化を抑える効果があることが認められています。
Q3:ロタウィルスワクチンの予防接種スケジュールについて教えてください。
A3:チューブに入った1回分(1.5cc)のワクチンを、生後6週から24週までの間に2回経口投与します。
1回目は生後20週までに完了してください。2回目は1回目の接種から27日(4週間)以上あけて接種します。
Q4:ロタウィルスワクチンの副反応について教えてください。
A4:国内臨床試験において、接種症例508例中、接種後30日間に報告されたおもな副反応は、易刺激性37例(7.3%)、下痢18例(3.5%)、咳や鼻水17例(3.3%)でした(承認時)。
*易刺激性とは、この場合は乳児のきげんが悪くなることです。
海外臨床試験で報告された副反応は、易刺激性、下痢(1~10%未満)、鼓腸(おなかにガスがたまってはってくること)、腹痛、皮膚炎(1~1%未満)でした。海外の市販後調査で、接種後に報告された重篤な副反応は、腸重積、血便、重症複合型免疫不全患者でのワクチンウィルス排せつを伴う胃腸炎でした。
Q5:ロタウィルスワクチンの胃腸炎予防以外のメリットはありますか?
A5:ロタウィルス感染症は、おう吐や下痢、発熱がおもな主症状の胃腸炎で、5歳までにだれもが一度は感染するといわれているありふれたウィルスですが、インフルエンザ、突発性発疹につぐ脳炎の原因であることはあまり知られていません。
日本では今でもワクチンで防げる病気(VPD)による被害が多くみられます。生後2ヶ月を「ワクチンデビュー」と考えて、かかりつけ医とよく相談して接種スケジュールを立てることを専門家は提唱しています。
Q6:ロタウィルス胃腸炎はどの程度みられるものですか?
A6:ロタウィルス胃腸炎は乳幼児に多くみられる疾患です。
5歳までに、ほぼすべての乳幼児が感染し、日本では小学校に入るまでに約2人に1人がロタウィルス胃腸炎で小児科外来を受診し、さらに外来受診者の15人に1人が入院していると推定されています。
Q7:下痢や脱水症以外にも注意すべき症状はありますか?
A7:ロタウィルス胃腸炎はふつう、2日程度の潜伏期間の後、水様性下痢が3~7日続きます。
大量の水様便を伴う下痢が、1日に10回程度起こることがあります。その他に、食欲不振、発熱、おう吐が伴うことがあります。
ロタウィルス胃腸炎の特徴としては、水様性下痢やおう吐、発熱が挙げられます。重症の脱水を引き起こし、命に関わることもあります。その他、無熱性けいれん、肝機能障害、腎不全、脳炎・脳症などを併発する場合があります。
Q8:ロタウィルスに感染した幼児には免疫ができるでしょうか?
A8:ロタウィルスに一度自然感染すると、その後は再感染しても、下痢症状は徐々に軽症化します。
複数回ロタウィルスに自然感染すると、その後は、中等度から重度のロタウィルス胃腸炎を予防できることが分かっています。ロタウィルスワクチンは、ウィルスのこの性質を利用して重症ロタウィルス胃腸炎を予防します。
Q9:ロタウィルスワクチン接種前後に、母乳を飲ませてもよいですか?
A9:接種前後に母乳を制限する必要はありません。
Q10:ロタウィルスワクチン接種後に吐いてしまったら、どうすればよいですか?
A10:接種直後にワクチンの大半を吐き出した場合は再度接種します。
Q11:ロタウィルスワクチンを接種後、ワクチンウィルスは便中に排せつされますか?
A11:接種1週間程度は便中に排せつされますが、排せつされたウィルスによって、まわりの人が感染して胃腸炎を発症する可能性は低いことが確認されています。
しかし一般的なこととして、乳児のおむつ交換後などには、ワクチン接種の有無に関わらず、石けんで十分な手洗いをするなど注意してください。家庭内に免疫機能に異常を認める人がいる場合などには、とくに手洗いを徹底するなどの注意が必要です。
Q12:ロタウィルスワクチンは他の胃腸炎にも有効ですか?
A12:ロタウィルスワクチンは、ロタウィルス感染以外の原因による胃腸炎には無効です。
《参考文献》
2011(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)
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