皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「予防接種一般」について解説しています。
- 1.予防接種のときにどのくらいの熱であれば受けてもよいですか?
- 2.重大な急性の病気にかかっているときには、予防接種は受けることができますか?
- 3.けいれん(ひきつけ)を起こしたことのある人への予防接種はどうしたらよいですか?
- 4.アレルギー体質、アトピー性皮膚炎の小児への予防接種はできますか?
- 5.かぜや手足口病、りんご病、突発性発疹などのウィルス感染症にかかったあとはどのくらい間隔をあけて予防接種を受けることができますか?
- 6.予防接種を受けた後の過激な運動、たとえば水泳、マラソンなどはどうすればよいですか?
- 7.妊娠中の女性、出産直後の女性への予防接種はできますか?
- 8.予防接種を受けることができなかった人へは、どうすればよいでしょうか?
- 9.トキソイドとワクチン、抗毒素のちがいについて教えてください。
- 10.生ワクチンと不活化ワクチンはどうちがいますか?
- 11.ワクチンの接種間隔はどのくらいあけたらよいですか?
- 12.定期の予防接種、任意の予防接種、海外旅行の際の予防接種にはどんなものがありますか?
- 13.沈降ワクチンと液状ワクチンのちがいは何ですか?
- 14.海外渡航および帰国後の予防接種はどのようにしたらよいですか?
※このQ&Aは平成24年時点の情報を元に作成しています。最新の情報は予防接種情報(厚生労働省)をご覧ください。
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Q1:予防接種のときにどのくらいの熱であれば受けてもよいですか?
A1:「明らかに発熱を呈している者」は予防接種は受けないように となっています。
その理由は発熱があると気がつかずに重大な病気にかかっていることがあり、発熱がその前ぶれであることがあるからです。
明らかな発熱とは、ふつうは大人では37度以上、小児では37.5度以上を指します。体温の測定は予防接種を受ける医療機関で行い、健康の状態をしっかりと調べておくことが大切です。予防接種を受ける場合にはふだんの体調や家族の中の感染症の有無などに注意して、不安がある場合には少し延期することも考えましょう。
Q2:重大な急性の病気にかかっているときには、予防接種は受けることができますか?
A2:重大な急性の病気にかかっているときには予防接種を受けることはできません。
重大な急性の病気にかかっているときには、病気の経過が予測できないために予防接種を受けることはできません。軽いときには医師の判断により受けることができます。
Q3:けいれん(ひきつけ)を起こしたことのある人への予防接種はどうしたらよいですか?
A3:過去にけいれん(ひきつけ)を起こしたことのある人は予防接種は要注意となっています。
乳幼児期のけいれんは、多くは熱性けいれんですが、一部のけいれんはてんかんへの始まりのことがあります。けいれんの発生後、どのくらい期間をあければ良性のけいれんかまたは神経学的な基礎疾患があるのか、予防接種時に明らかにすることは困難です。
けいれんを起こしたことのある人には、けいれんの症状を詳しく聞いたり、脳波の検査を行うなど十分な注意が必要とされています。主治医とよく相談をしてから予防接種を受けるようにすべきです。
一年以内にけいれんを起こしたことがあれば、予防接種は中止となります。一年以上あいていれば接種は可能となります。何回もけいれんを起こしたり、熱のないけれんであったり、抗けいれん剤を飲んでいてけいれんの本質がはっきりとしないときには、当分接種を見合わせて、脳波などで経過を観察することが必要です。麻疹(はしか)の予防接種では熱が出ることがありますので、注意が必要です。
Q4:アレルギー体質、アトピー性皮膚炎の小児への予防接種はできますか?
A4:予防接種の成分で強いアレルギー反応を起こしたことのある人は予防接種はできません。
三種混合ワクチン、二種混合ワクチン、ポリオワクチン、日本脳炎ワクチンなど繰り返し接種が必要な予防接種では、一度強いアレルギー反応を起こした場合には以後の同じ予防接種はできません。
また、卵、カナマイシン、エリスロマイシン、ゼラチンなどでアレルギー反応を起こしたことのある場合には、これらを含む予防接種は行いません。
薬疹が出る、卵で発疹ができる、喘息がある場合に、予防接種を受けることができないということはありません。アトピー性皮膚炎、気管支喘息があるだけの場合には、気管支喘息や卵アレルギーなどに注意した上で、慎重に行えば予防接種を受けることができます。
単にアレルギー体質であるからという理由で予防接種を受けないと、自然感染による被害の方が大きくなります。
Q5:かぜや手足口病、りんご病、突発性発疹などのウィルス感染症にかかったあとはどのくらい間隔をあけて予防接種を受けることができますか?
A5:この程度の感染症であれば、治ってから一ヶ月後には予防接種が可能になります。
一般にかぜといわれるものの原因となるウィルスの種類は230種類以上もあり、それぞれの潜伏期間、症状の経過、合併症のことなどを考慮すると、一概にどのくらい間隔をあければ予防接種が可能かをいうことはできません。
目安として冬季のかぜであれば治ってから1~2週間程度、夏かぜは治ってから一ヶ月の間隔をあければ、接種が可能と考えるとよいでしょう。
麻疹(はしか)、風疹、おたふくかぜなどのような予防接種があるウィルス性の病気はふつうのかぜよりも重症な病気なので、治ってから一ヶ月以降に予防接種を受けるようにしましょう。
Q6:予防接種を受けた後の過激な運動、たとえば水泳、マラソンなどはどうすればよいですか?
A6:予防接種を受けた後30分間は、その場で様子をみるようにとされています。これは急な副反応が起こることがあるからです。
接種当日もふつう通りに生活をすることはできますが、体育やクラブ活動などの激しい運動は控えるようにしましょう。翌日、体調に変わりなければ運動はしてもかまわないでしょう。接種後、一時間ほどあいておれば入浴はかまいません。
生ワクチン(ポリオ、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、BCGなど)では2~3週間、不活化ワクチン(三種混合、二種混合、日本脳炎、インフルエンザなど)では24時間は副反応の出現に注意しておきましょう。
Q7:妊娠中の女性、出産直後の女性への予防接種はできますか?
A7:生ワクチンは妊娠していることが明らかであるときには、接種不適当者です。
一般に生ワクチン(ポリオ、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、BCGなど)は胎児への影響を考慮して妊娠期間中は接種は行いません。予防接種を受けた人(小児)から周囲の人にワクチンウィルスが感染することはないと考えられていますので、妊婦のいる家庭の小児に接種してもかまいません。
風疹は絶対に妊娠していない時を選んで接種し、接種後二ヶ月間は妊娠は避けましょう。
不活化ワクチン(三種混合、二種混合、日本脳炎、インフルエンザなど)は胎児に影響を与えることはないと考えられているため、妊婦は接種不適当者には含まれていません。
出産後の女性の予防接種は、体力がほぼ正常に回復した出産後三ヶ月以降は、いつでも接種してもさしつかえないといえますが、健康状態については産婦人科医の意見を聞いてみることも大切です。
なお、授乳中の女性への予防接種で、生ワクチン、とくに風疹ワクチンの接種によって、ワクチンウィルスが授乳中に出て乳児に移行することはありますが、乳児に風疹の免疫を与えるほどにはいたりません。
Q8:予防接種を受けることができなかった人へは、どうすればよいでしょうか?
A8:ワクチンの接種を受けることなく成長したり、自然に感染しないままでいると、あとで感染したときに症状が重くなり入院が必要になることがあります。
したがってワクチン接種を忘れていたことに気がついた時点で、接種を受けることが必要です。定期接種の場合は、対象年齢の範囲内であれば、基礎免疫を早くすませ、年齢を超えている場合には、その他の必要な予防接種を含めて任意の予防接種を受けるようにすることが大切です。
Q9:トキソイドとワクチン、抗毒素のちがいについて教えてください。
A9:トキソイドとは細菌などが増殖する過程で産生される毒素(トキシン)をホルマリンで処理し、免疫源性(抗体を産生させ、予防接種としての効果を上げるため作用)を失わないようにして無毒化したものです。
ワクチンはウィルスや細菌を継代培養などで毒性をきわめて弱くしたもの(弱毒株、生ワクチン)または、有効成分だけを取りだして作ったものや、加熱などで処理し全く毒性をなくしたもの(不活化ワクチン)があります。
一般に不活化ワクチンやトキソイドは一定の期間が経過すると免疫力が低下しますので、追加接種が必要となります。
抗毒素とは細菌毒素やヘビ毒を中和する抗体のことをいいます。
生ワクチン | ウィルス | ポリオ、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘、黄熱 |
細菌 | BCG | |
不活化ワクチン | ウィルス | 日本脳炎、インフルエンザ、狂犬病、B型肝炎、A型肝炎 |
細菌 | 三種混合(DPT)、コレラ、肺炎球菌 | |
レプトスピラ | ワイル病秋やみ | |
トキソイド | 毒素 | ジフテリア、破傷風、二種混合(DT)、はぶ |
治療薬 | 抗毒素 | ジフテリア、破傷風、ガスえそ、ボツリヌス、まむし、はぶ |
Q10:生ワクチンと不活化ワクチンはどうちがいますか?
A10:生ワクチンは病原性を弱くしたウィルスや細菌などを接種して感染を起こさせる者で、ワクチンによる感染はきわめて軽く安全なものです。
接種後に得られる免疫は強く、自然感染による病原体の感染を防ぐことができます。この免疫の強さは自然感染の場合とほぼ同様に持続するので、終生免疫ができることになります。
不活化ワクチンは、大量に培養されたウィルスや細菌などを集めて精製したあと、加熱やホルマリンなどの薬剤を用いて処理し、病原体の活力を失わせて不活化したものです。
このようなワクチンの中には、とくに感染予防に働く抗原をある程度精製して不活化したワクチンもあります。百日せきワクチン、インフルエンザHAワクチンなどで、これらは発熱反応などが軽減された優れたワクチンです。
Q11:ワクチンの接種間隔はどのくらいあけたらよいですか?
A11:あらかじめ混合されていない2種以上のワクチンを接種するときには、ふつう不活化ワクチンおよびトキソイドの場合には、1週間以上あけます。
これは1週間過ぎればワクチンによる副反応がなくなるためです。
生ワクチンの場合には、ウィルスの干渉を防止するために4週間以上間隔をあけます。ただし、医師が必要と認めた場合にはあらかじめ混合されていない2種以上のワクチンについて同時に接種することができます。
Q12:定期の予防接種、任意の予防接種、海外旅行の際の予防接種にはどんなものがありますか?
A12:次の通りです。
定期の予防接種 | ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、BCG 三種混合(DPT)とはジフテリア、百日せき、破傷風を混合したもの 二種混合(DT)とはジフテリア、破傷風を混合したもの |
任意の予防接種 | インフルエンザ、おたふくかぜ、水痘、B型肝炎、A型肝炎、肺炎球菌 |
B型肝炎母子感染予防事業に基づく予防接種 | B型肝炎 |
海外旅行に必要な予防接種 | 黄熱、コレラ、破傷風、狂犬病、日本脳炎、B型肝炎、A型肝炎など滞在地で必要なもの(注意:マラリヤには予防接種はありません) |
Q13:沈降ワクチンと液状ワクチンのちがいは何ですか?
A13:沈降型ワクチン(三種混合、二種混合、破傷風トキソイドなど)では抗原性を強くするために、水酸化アルミニウムゲル、リン酸アルミニウムゲルが用いられており、抗原タンパクはゲルに吸着しているために、タンパク同士の吸着が起こりにくく、液状ワクチンに比べて安定な製剤となっています。
外観から沈降型は白い沈殿物を伴ったり濁りがあり、すぐに分かります。使用時にはよく振ってから使用する必要があります。
液状ワクチン(日本脳炎ワクチン、インフルエンザHAワクチンなど)では、抗原タンパクの種類によっては水溶液で長時間置いておくとしだいに粒子同士の凝集が起こり、若干不安定となるものがあります。ゼラチン、アミノ酸、糖などが安定剤として添加されることになります。
Q14:海外渡航および帰国後の予防接種はどのようにしたらよいですか?
A14:海外生活で必要な予防接種は、渡航者本人の場合は破傷風、B型肝炎、狂犬病、日本脳炎、ポリオ、A型肝炎、家族の場合はBCG、DPT、ポリオ、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘、B型肝炎、日本脳炎、狂犬病、A型肝炎 などが考えられます。
DPT、破傷風トキソイド、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘、B型肝炎、日本脳炎、A型肝炎などは予防接種実施の医療機関などで接種してもらうことが可能です。
また、海外渡航までに日時があまりない場合には、医師が必要と認めたら同時に接種できます。接種に当たっては、同一部位に接種するのを避けて、別々の腕に接種することが望ましいとされています。
米国のように留学に際して、基底の予防接種を完了していることを要求する国がありますので、十分な時間的なゆとり(数ヶ月)をもって、予防接種を受けてください。
なお、国によってちがいがありますが、黄熱については予防接種証明書(イエローカード)が要求されます。黄熱ワクチンは通常の医療機関では実施していません。もよりの検疫所に電話で問い合わせてください。
小樽検疫所(0134-22-5234)、仙台検疫所(022-367-8100)、成田空港検疫所(0476-34-2301)東京検疫所(03-3471-8700)、横浜検疫所(045-201-4458)、新潟検疫所(025-241-2323)、名古屋検疫所(052-661-2670)、大阪検疫所(06-571-3621)、関西空港検疫所(0724-55-9012)神戸検疫所(078-672-9651)、広島検疫所(082-251-4785)、福岡検疫所(092-291-4092)、鹿児島検疫所(0992-22-1473)、那覇検疫所(098-868-8037)、日本検疫衛生協会(045-671-7041)
帰国後には接種を受けていない、あるいは継続中の接種があるときには、続けて接種を受けて完了させることが大切です。
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