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健康いろいろ Q and A予防接種 Q and A > 3.日本脳炎 

予防接種Q and A

〈予防接種 3〉 日本脳炎

皆様からよく聞かれる質問や疑問にについて Q and A 形式にまとめてみました。このページでは、「日本脳炎の予防接種」について解説しています。
 

Q and A (クリックしてください。回答へ進みます)

  1. 日本脳炎について教えてください。
  2. 日本脳炎ワクチンの副反応について教えてください。
  3. 予防接種スケジュールについて教えてください。
  4. 未接種者および不完全接種者に対するワクチン接種は、どのようにすればよいでしょうか?
  5. 平成17年5月30日の積極的勧奨の差し控えにより、規定の回数を接種せずに定期接種の年齢を過ぎてしまいました。どうすれば良いのでしょうか?
  6. 初回接種の間隔は6日から28日までの間隔(いわゆる1~4週間間隔)をおいて接種となっていますが、それ以上になったときはどうすればよいでしょうか?
  7. 日本脳炎ワクチンの接種を受けたかどうかはっきりしないときにはどうしたらよいですか?
  8. 1期初回の標準的な接種年齢は3歳に達したときから、4歳に達するまでの期間となっていますが、それ以前に接種することはできないでしょうか?
  9. 非流行地の居住者でも予防接種を行う必要があるでしょうか?
  10. 日本脳炎ワクチンによる抗体応答について教えてください。
  11. 日本脳炎ウィルスの感染について教えてください。
  12. 日本脳炎の患者発生の推移につて教えてください。
  13. 東南アジアなどへ出かけるときは、日本脳炎の予防接種を受けたほうがよいでしょうか?
  14. 日本脳炎ワクチン接種はいつごろ受ければよいですか?1年中いつ受けてもよいのですか?
  15. 2期(9~13歳未満)まで接種が終了しています。それ以降は接種を受ける必要はありますか?

Q1:日本脳炎について教えてください。

A1:日本脳炎の患者発生は近年、少なくなっていますが、毎年各都道府県のブタの抗体検査結果から明らかなように、日本脳炎ウィルスは西日本を中心に広い地域で確認されています。

平成12年から平成23年7月までに報告された日本脳炎患者の報告地域は、九州が22例ともっとも多く、ついで中国地方の18例、中部地方の8例、四国の6例、近畿の4例、関東の4例と続き、この期間での北海道・東北地方からの報告はありませんでした。日本脳炎に対する予防接種は基礎免疫を確実に行うことと、忘れずに追加免疫を続けることが大切です。

日本脳炎ウィルスは水田や沼地などに発生するコガタアカイエカなどの蚊によって、ウィルスに感受性のある脊椎動物(ヒト、ウマ、ブタなど)の間で広がります。ヒトはウィルスを保有している蚊に刺されることによって、感染・発症します。コガタアカイエカは暑い日中よりも、日没以降から活動が活発になることから、日没以降に野外に出る際は、蚊よけ剤の使用や衣類を工夫するなど、なるべく蚊に刺されないようにすることも予防法の一つです。

日本脳炎ウィルスのヒトへの感染においてブタは重要な役割を果たしています。ブタは感染を受けることによって、多量のウィルスを体内で産生します。そしてウィルスに感染したブタを吸血した蚊が、日本脳炎ウィルスを保有するようになります。日本脳炎はウィルスに感染した100~1000人に1人が発症すると報告されています。発症すると、高熱・頭痛・おう吐・意識障害やけいれんなどの症状を示す急性脳炎を起こします。致死率は20~40%(国内での過去25年間では約17%)と高く、乳幼児や高齢者ではとくに死亡のリスクが高くなります。精神神経学的な後遺症は生存者の45~70%に残り、小児ではとくに重度の障害を残すことが多いとされています。

わが国では、昭和41年までは年間1000人を超える患者発生が記録されていましたが、ワクチンの普及と媒介する蚊に刺される機会の減少および生活環境の改善によって、昭和47年以降は年間100人以下になり、最近では毎年10人未満が西日本を中心に発生するにとどまっています。

このように国内の患者は減少していますが、日本脳炎はわが国以外のアジア地域に常在しており、現在でも大流行が見られるなど多数の患者・死亡者が報告されています。

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Q2:日本脳炎ワクチンの副反応について教えてください。

A2:日本脳炎の予防接種は平成17年5月30日以降、定期接種が中止になったわけではありませんが、積極的勧奨が差し控えられたことにより、接種を受ける人が大きく減少しました。以前のマウス脳由来のワクチンに代わり、平成21年6月2日から接種が始まった乾燥細胞培養日本脳炎ウィルスワクチンは、現在定期接種のワクチンとして位置づけられています。

2種類の乾燥細胞日本脳炎ウィルスの臨床試験において、承認時までに得られたおもな副反応は、局所の副反応として、紅斑、内出血、疼痛、腫脹、掻痒感など、全身の反応として、発疹、じんま疹、紅斑、頭痛、せき、鼻水、咽頭発赤、おう吐、下痢、食欲不振、腹痛、発熱などでした。

これまで日本脳炎ワクチンはマウス脳を原材料として使用していたことから、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などの脱髄性疾患の発生が理論的に危惧されてきました。現在使用されている乾燥細胞日本脳炎ワクチンはVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)を使用しているため、マウス脳の混入による脱髄性疾患の可能性は排除されています。しかしADEMの原因は不明であり、他のワクチン接種後でもまれにADEM発症がみられることから、他のワクチンと同程度のリスクは培養細胞由来になってもかかわらず存在するものと考えられます。

なお、培養細胞由来日本脳炎ワクチン接種後にきわめてまれに、ショック・アナフィラキシー様症状、脳炎・脳症、けいれん、血小板減少性紫斑病などを起こしたとの報告があります。

年長児に接種する際には、接種直後の血管迷走神経反射による顔色不良、気分不良、冷汗、徐脈、血圧低下、失神などの発生に注意が必要です。

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Q3:予防接種スケジュールについて教えてください。

A3:平成6年以来、予防接種法改正により、日本脳炎ワクチンは定期接種として実施されるようになりました。また、予防接種法による接種対象以外の人では任意接種として受けることができます。

日本脳炎ワクチンの効果を確実にするためには、基礎免疫を完了させ、その後の追加免疫によって、発症防御に必要な中和抗体を維持する必要があります。

1 期
(基礎免疫)
初回接種:通常0.5cc(3歳未満では0.25cc)ずつを6日~28日(いわゆる1~4週間)をおいて2回皮下に接種します。
追加接種:初回接種後、おおむね1年を経過した時期(標準として4歳に達したときから5歳に達するまでの間)に0.5ccを1回皮下に接種します。
2 期 定期接種では9歳以上13歳未満の者(標準として9歳に達したときから10歳に達するまでの間)に0.5ccを1回皮下に接種します。
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Q4:未接種者および不完全接種者に対するワクチン接種は、どのようにすればよいでしょうか?

A4:日本脳炎ワクチンの効果を確実にするためには、基礎免疫を完了させ、その後の追加免疫によって、発症防御に必要な中和抗体を維持する必要があります。

基礎免疫をまったく受けていない人に対しては、初回接種から免疫を始め、翌年(おおむね1年後)に追加接種を行います。

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Q5:平成17年5月30日の積極的勧奨の差し控えにより、規定の回数を接種せずに定期接種の年齢を過ぎてしまいました。どうすれば良いのでしょうか?

A5:厚生労働省 「日本脳炎ワクチン接種に係わるQ&A:平成23年7月版」に掲載されている表を参照にして下さい.
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou20/annai.html)

接種スケジュールは複雑なため、正しく接種時期や回数を理解することは容易ではなく、実際の接種にあたってはかかりつけの医師と十分に相談をしながら、接種を受けることをお勧めします。

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Q6:初回接種の間隔は6日から28日までの間隔(いわゆる1~4週間間隔)をおいて接種となっていますが、それ以上になったときはどうすればよいでしょうか?

A6:日本脳炎ワクチンの初回接種における接種間隔は、日本脳炎の流行前にできるだけ早く免疫をつけるために6日から28日(いわゆる1~4週間間隔)をおいてと定められていますが、過去の研究報告では、6日の間隔(いわゆる1週間間隔)をおいて受けるより28日の間隔(いわゆる4週間間隔)をおいて受けるほうが、同等あるいは免疫の獲得は良いとされています。

ワクチンの効果は28日(いわゆる4週間)を過ぎて接種した場合も十分に認められますので、健康状態の良いときにすみやかに接種を行ってください。

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Q7:日本脳炎ワクチンの接種を受けたかどうかはっきりしないときにはどうしたらよいですか?

A7:中和抗体を調べてから接種を行うことがもっとも科学的な方法ですが、日本脳炎の中和抗体検査は医療機関で一般的に行われていませんので、通常は抗体価を調べることなく、基礎免疫から接種を始めます。

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Q8:1期初回の標準的な接種年齢は3歳に達したときから、4歳に達するまでの期間となっていますが、それ以前に接種することはできないでしょうか?

A8:1期初回は生後6ヶ月から90ヶ月未満が対象となっていますので、生後6ヶ月以上であれば定期接種として接種は可能です。ただし、3歳未満の1回接種は0.25cc(半量)となっています。

標準的な接種年齢については、他の予防接種スケジュールも含め設定されていますが、海外渡航や地域の患者発生状況によっては3歳未満でも定期接種としての接種が可能です。また、日本脳炎はウィルスを保有した蚊に刺されることで感染しますので、蚊に刺されないように注意することが大切です。コガタアカイエカの活動がさかんになるのは日没以降といわれており、この時間帯はとくに注意が必要です。

標準的な接種年齢が3歳に達したときから4歳に達するまでの期間になった理由は、日本脳炎患者が小児で発症していた頃、患者の年齢が0~2歳より3歳以降に多かったということと、0~2歳までは定期接種として受けなければならないワクチンが多く、それらが一段落した頃ということでこの年齢になったようです。

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Q9:非流行地の居住者でも予防接種を行う必要があるでしょうか?

A9:わが国の日本脳炎ウィルスは、毎年西日本を中心に伝播がくり返し起こっていることが分かっています。非流行地(患者発生のない地域)といえども日本脳炎ウィルスが広まっていると考えられることと、非流行地に居住していてワクチン接種を受けなかった人が、流行地に旅行してそこで日本脳炎ウィルスに感染して発症した例もあります。非流行地域の居住者に対しても予防接種を行う方がよいと考えられています。同様の理由でアジア地域に滞在する人や、同地域に旅行を計画している人にも勧めてください。

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Q10:日本脳炎ワクチンによる抗体応答について教えてください。

A10:現在使用されている、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの臨床試験は、生後6ヶ月以上90ヶ月未満の健康小児を対象に行われており、3回の接種により抗体陽転率は100%となっており、高い中和抗体価が得られています。

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Q11:日本脳炎ウィルスの感染について教えてください。

A11:自然界では水田や沼地に発生するコガタアカイエカなどの蚊によって、ウィルスに感受性のある脊椎動物の間で伝播します。とくにブタは感染により大量のウィルスを産生し、血液中にウィルスが検出されるウィルス血症を起こします。このウィルスを多量に含む血液を蚊が吸血し、ウィルスを保有する蚊となって、またそれが他のブタに伝播して、蚊からブタへ、ブタから蚊へのウィルス伝播のサイクルが成立します。

この間にウィルスを保有する蚊が大量に発生し、このウィルスを保有する蚊に刺されることによって、ヒトは日本脳炎ウィルスに感染します。最近、野生のイノシシもブタと同様、感染後にウィルス血症を起こす動物として注目されています。

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Q12:日本脳炎の患者発生の推移につて教えてください。

A12:わが国では、昭和41年頃までには年間1000人を超える患者発生があって、致死率も30~50%と高いものでした。昭和47年以降では100人未満となり、近年では毎年10人未満が西日本を中心に発生するにとどまっています。

平成12年から平成23年7月までに報告された日本脳炎患者の報告地域は、九州・沖縄が22例ともっとも多く、ついで中国地方の18例、中部地方の8例、四国の6例、近畿の4例、関東の4例と続き、この期間での北海道・東北地方からの報告はありませんでした。

日本脳炎ウィルスは毎年行われているブタの抗体検査によって、西日本を中心に広がりが認められていますが、患者数は減少し、低流行状態となっています。その原因として、

  1. 小中学生を中心に日本脳炎ワクチン摂取率が高い水準にあること
  2. 水田の減少と稲害虫駆除により蚊が減少したこと
  3. 生活環境の改善により蚊に刺される機会が減っておりこと

などが考えられます。

わが国以外のアジア諸国における流行の推移は、韓国では日本脳炎ワクチン接種を積極的に進めた結果、昭和56年以降激減しました。中国でもワクチン接種が進められており、患者数は減少していますが、平成15年には中国南部で多くの日本脳炎患者の発生と死亡が報告されています。中国の他にもアジアにおけるいくつかの国では、日本脳炎の流行が大問題となっています。たとえば、ベトナム、タイ、ネパールおよびインドでは現在でもしばしば数千人規模の流行が認められており、日本脳炎予防対策が急務となっています。これらの国々の患者増加は、人口の増加と水田開発、養豚振興などの施策と関連しているといわれています。

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Q13:東南アジアなどに出かける時は、日本脳炎の予防接種を受けた方がよいでしょうか?

A13:わが国では患者の発生は少なくなりましたが、アジア、とくにモンスーンアジア地域では現在でも常在性の疾患であり、しばしば大流行がみられます。常在地に出かける場合、ことに長期にわたる場合には接種を受けておくことを勧めてください。

基礎免疫を受けている人は1回追加接種を受けて下さい。また、1回もワクチン接種を受けていない人は基礎免疫からの接種が必要です。接種の間隔については、マウス脳由来のワクチンでは4~5年に1回追加接種を行うことが望ましいと考えられていましたが、現行の細胞培養ワクチンでは、接種の歴史が短いためその知見は十分には得られていません。
*現行の細胞培養ワクチンは平成21年6月2日から接種が始まりました。それ以前はマウス脳由来のワクチンです。

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Q14:日本脳炎ワクチン接種はいつごろ受ければよいですか?1年中いつ受けてもよいのですか?

A14:日本脳炎の予防接種は、平成6年の予防接種法により定期接種となり、予防接種スケジュールが定められていますが、接種時期は原則として、いつでも接種を受けることができます。

ただし、流行地において、基礎免疫(1期)を受ける場合には、日本脳炎ウィルスの媒体であるコガタアカイエカの活動が始まる夏前に初回接種(2回)を完了しておくことが望ましいです。

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Q15:2期(9~13歳未満)まで接種が終了しています。それ以降は接種を受ける必要はありますか?

A15:2期まで接種が完了していれば、中学卒業の頃までは追加接種は必要ないでしょう。成人になれば抗体価は低下しますので、発症防御効果のある抗体価を十分に持続するためには、4~5年ごとの接種が推奨されます。

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《参考文献》
2011
(平成23年)予防接種に関するQ&A集(岡部 信彦、多屋 馨子ら):一般社団法人日本ワクチン産業協会 から転記(一部変更)

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予防接種Q & A

  1. 予防接種一般
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